今年の正月は東京で歌舞伎公演が4劇場で行われている。松本白鸚、中村吉右衛門、中村芝翫らが出演する歌舞伎座、市川海老蔵、中村獅童らが出演する新橋演舞場、尾上菊五郎、中村時蔵らが出演する国立劇場、そして、尾上松也、坂東巳之助ら若手が出演する浅草公会堂で、各劇場見てきたけれど、お正月らしい華やいだ雰囲気の中、初芝居を楽しんだ。

4劇場の中で、もっとも客の入りがいいのが演舞場だろう。ここ数年、海老蔵が演舞場の正月公演の座頭となっており、今年も昼の部、夜の部の8演目中、「幡随長兵衛」「俊寛」「春興鏡獅子」など5演目に出演して大奮闘だが、今回は強力な「助っ人」がいる。長女の堀越麗禾ちゃん(7)、勸玄くん(5)で、夜の部「牡丹花十一代」で本興行では初の親子3人での共演を果たしている。

海老蔵は、鳶頭の成田屋海老蔵役で、麗禾ちゃん、勸玄くんは、頭の子供という設定。海老蔵が登場すると、「待ってました!」と声がかかるが、「待ってましたとはありがたい。だけど皆さんが本当に待っているのは俺のことかい」と返し、客席に大きな笑いが起こる。なかなか登場しない2人に「1番心配なのはこの俺だ」と親の表情を見せると、また笑いが広がった。ようやく2人が花道から現れると、この日一番の大きな拍手が起こった。

稽古を積んできた2人はしっかりとした所作で踊った後、ちょこんと正座。麗禾ちゃんの「ご見物の皆さま、明けまして」の声に合わせて、2人で「おめでとうございます」と頭を下げると、「成田屋!」の掛け声が飛んだ。さらに麗禾ちゃんの「今日、ご見物へのあいさつ代わりにご先祖様から」とのあいさつを受けて、勸玄くんが「習い覚えた舞もどうやらめでたく舞納めでございます」とつなげた。勸玄くんは「幡随長兵衛」でも息子の長松役で出演。長い台詞もある役を立派に演じていた。

「子役と動物には勝てない」とは、舞台やドラマでよく言われる言葉だが、今回も座頭の海老蔵以上に拍手と掛け声を浴びた。そして、化粧した麗禾ちゃんの姿に「(母親の)麻央さんにそっくり」とささやく声が多かった。実際、海老蔵も先日、インスタグラムに演舞場に向かう麗禾ちゃんの写真を投稿。斜め後方からの撮影で、海老蔵も「この角度、麻央かな?とふと思う」と言うほどだ。

国立劇場「姫路城音菊礎石」でも菊五郎の孫で、尾上菊之助の長男和史くん(5)、寺島しのぶの長男真秀(まほろ)くん(6)が出演。こちらもおじいちゃん、お父さんに劣らぬ拍手と掛け声だった。今年4月で平成は終わるけれど、新しい年号では、成長した彼らが若手花形として大活躍してくれそうだ。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)