AKB48グループ3代目総監督の向井地美音(22)が各界のリーダーから「リーダー論」を学ぶ新連載の第5回は、“ホスト界の帝王”ROLAND(27)への直撃最終回(第3弾)です。

東京・新宿歌舞伎町のホストクラブ「THE CLUB」を訪問し、後輩(部下)との接し方から、理想のリーダー像、ROLAND流仕事論まで…語り尽くしてくれました。【取材・構成=大友陽平】

ROLAND(左)を直撃し握手するAKB48向井地美音(撮影・鈴木正人)
ROLAND(左)を直撃し握手するAKB48向井地美音(撮影・鈴木正人)

向井地 後輩と接する時やアドバイスをする時に気をつけていることはありますか?

ROLAND 例えば「どうやったら売れますか?」と聞いてくる子が多いんですけど、僕は「売れるコツは、売れるコツを聞かないことだ」と言います。そういうことを聞く深層心理って、うまくいく裏技とか、近道があるんじゃないかという怠けの心があるからなんです。そういうことを聞くんじゃなくて、自分で探していくんだと。近道なんてないと。

向井地 私も「どうやったら選抜に入れますか?」と聞かれることがあります。

ROLAND そうしたら「どうしたら選抜に入れるかを聞かないことよ」って(笑い)。

向井地 かっこいい!(笑い)。いただきます!

笑顔で対談するROLAND(左)と向井地美音(撮影・鈴木正人)
笑顔で対談するROLAND(左)と向井地美音(撮影・鈴木正人)

ROLAND 例えば、後輩がミスして落ち込んでいた時、なぐさめる上司やリーダーもたくさんいると思うんですけど…。「止まない雨はない」っていう言葉があるじゃないですか? すごい良い言葉だと思うんですけど、ふと疑問に思うんです。その状況って、静観してただ待っているだけで、そこに何の努力もないんです。だったら、「雲の上にいってみよう」と。雨雲の上にいったら、雨は止むじゃないですか? 落ち込んでいる子にはよしよしとはしないで、晴天の喜びを味わってほしい。その先にしか未来は待っていないと思います。だからどちらかというと、僕は優しいリーダーではないですね。男女の違いはあるかもしれないですが、結局頑張るしかないので、そこはしっかり伝えます。向井地さんにも、総監督としてビシバシ言ってほしいですね!

向井地 若いメンバーは「これはできないです」って断るパターンも多いみたいで…。前はそういうことはなかったみたいなんですけど…。

ROLAND そういう時、向井地さんは優しい方ですか?

向井地 私は怒れないんですよ…。「分かるよ~」という感じになってしまって。自分に自信がないから、自分ができていないことを怒れないなって…。

ROLAND それはきっと、自分に自信がないから怒れないのではなくて、「怒らないから自信がない」んです。厳しく言ったら、自分にはね返って来るじゃないですか? 自分がやる責任が生じて、それが1つの不可抗力になって、必然的に頑張れてしまうじゃないですか。

向井地 すごい…。

ROLAND だから、厳しく言うべきなんです。おのずと自分も頑張れるので。「何でそんなに女の子のこと悲しませるの?」って言った翌日に自分が悲しませたらかっこ悪い。だから、どうやったら喜んでくれるのかなって寝る前に必死に考えるわけです。そうしたら次の日、喜んでくれる。言ってみることって大事で、それが自分の努力につながって、その努力が自信につながるので。この前も女の子が泣いてるときに、若い子がハンカチを持ってなかったんです。「なんで持ってないんだよ!」って怒って。でも自分も実は持ってなかったので、次の日、すぐ買いに行きました(笑い)

向井地 (笑い)

ROLAND それがなかったら、ハンカチは買ってないですからね。だから怒った方が良いですよ…。話は変わって…。僕らは高校時代、“男子校”みたいな感じで、部活も恋愛禁止だったんです。同じ駅の反対口に女子高があって、そこも校則が厳しくて交際禁止で。1年生の時に、女子を3秒見ていて、それが見つかったらグラウンド10周みたいな理不尽なことがあって、つらい思いをして…(笑い)。西野カナさんの曲を聞くことが、乙女心を知る唯一の方法だったんです(笑い)。どうされてるんですか?

笑顔で対談するROLAND(左)と向井地美音(撮影・鈴木正人)
笑顔で対談するROLAND(左)と向井地美音(撮影・鈴木正人)

向井地 (笑い)。私も男心は全く分からないです…。最後に人を好きになったのは小6とか…。AKB48の曲の歌詞って、男の子目線が多いので、意外と女の子と考えてることは一緒なのかな? とは思います。私の中では、男の人は恋愛のこととかで悩まないイメージがあったので、女の子と一緒じゃん! って。

ROLAND 男の方が単純ですよ。高校時代、「ヘビーローテーション」のミュージックビデオとかをみんなで見て「今、こじはるちゃんが、俺のこと見てた!」とかやってましたからね。

向井地 (笑い)。ROLANDさんに聞きたかったのは、ホストの方も夢を見せる職業で、プライベートは一切見せないと著書にも書かれていました。アイドルも夢を見せる仕事ですけど、AKBは(SNSで)プライベートとか、ドキュメンタリーで舞台裏を見せたりするので、どう思うんだろうなって思いました。

ROLAND ホストも、感情移入できる子の方が売れるんです。生活感とか所帯じみたところを売りにしている子の方が、比較的売れます。ただ僕は売れるホストになりたいんじゃなくて、かっこいいホストになりたかったので。現実感を売りにする子に負けたこともあります。でも「かっこ悪く勝つくらいなら、かっこ良く負けた方がいい」って。だからコンビニに行っているホストに絶対負けるかと。「コンビニがこっちに来いよ!」という思いで、コンビニには手を染めなかったです。もちろん人それぞれで、親近感を感じられたらそれはそれでうれしいですよね。どっちもメリットもデメリットもあると思います。

笑顔で対談するROLAND(左)と向井地美音(撮影・鈴木正人)
笑顔で対談するROLAND(左)と向井地美音(撮影・鈴木正人)

向井地 改めて、「理想のリーダー像」を教えていただけますか?

ROLAND それは「きついときに頑張れるリーダー」です。良い時に頑張る人ってたくさんいるんですけど、人の本当の姿というか、人間性って、つらい時に出ると思います。おなかいっぱいのときに目の前のパンを譲るのは簡単ですけど、空腹の時に全部自分で食べるか、半分にするか、全部あげるか…人の深層心理はその極限の時に出ると思います。だから仕事も、きっとアイドルの活動も、きついときに本性が出る。本当に価値のある人間は、つらい時に頑張れる人だと思います。ダンスとか歌詞を間違えてしまった次の日のステージって、きっと緊張するじゃないですか? でもそこで頑張れる人は強いし、リーダーにふさわしいと思います。

向井地 ROLANDさんは考え方も芯が通っていて、美しいと思いました。いっぱい勉強になりましたし、リーダーであるからこそ、より努力していかないといけないと思いました。最後に聞きたいんですけど…。私はもともとAKBが好きで入って、好きな気持ちだけでやってきたんですけど、総監督になって好きな気持ちだけではしんどい時もあるんです。好きという気持ちで、これだけホストを頑張れている理由を教えてください。

ROLAND 僕が今頑張れているのは、好きという気持ちももちろんそうですけど、サッカー選手になれなかったときに自暴自棄になって、この業界がなかったら、ずっとそのままだったと思うんです。でもこの業界に出合えて、少しでも自分が変われた…。ホスト業は「母校」みたいなところがあって、頑張れるんだと思います。今、別の会社もやっていて、ホストクラブに固執する必要はないんですけど、毎日店に来て、みんなの顔を見に来ているので「好き+愛着」ということもあります。きっと向井地さんも、AKBに対しても、それに出合えたことで変われたなという部分はあったんじゃないですか?

向井地 もともと子役をやっていて、学校に行きたくて一時芸能界を辞めたのに、中学では勉強に追いつけなくてずっと家にいる時期にAKBに出合ったので…。出合えずにそのままだったらと思うと…。

ROLAND 怖くないですか?

向井地 怖いです…。

ROLAND そこに感謝があれば、つらい時も頑張れると思いますし、僕もホストを辞めたいなと思ったこともありましたけど、この業界がなかったら…と踏みとどまれました。辞めたくなったら、いつでも話を聞きますよ!

向井地 今日は本当にありがとうございました!

(おわり)

◆ROLAND(ローランド)1992年(平4)7月27日、東京都生まれ。中学時代はJリーグ下部組織、高校時代は名門・帝京高で活躍するサッカー少年。大学入学早々に自主退学し、ホストの道へ。20歳の時に、当時の店舗の代表取締役に就任し、18年7月のバースデーイベントでは6000万円以上の売り上げを記録するなど“ホスト界の帝王”と呼ばれる。現在はホストクラブのオーナーをはじめ、美容品のプロデュースやアパレル事業などを手掛ける。昨年発売の著書「俺か、俺以外か。ローランドという生き方」がヒット。