1月期の冬ドラマが出そろった。ミステリー、ラブコメ、ホームドラマなどジャンル多彩で、ドラマファンには何らかの推し作品にたどり着けそうなラインアップだ。「勝手にドラマ評」49弾。今回も単なるドラマおたくの立場からあれこれ言い、★をつけてみた(シリーズもの、深夜枠は除く)。

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月9ドラマ「ミステリと言う勿れ」(C)フジテレビ
月9ドラマ「ミステリと言う勿れ」(C)フジテレビ

◆「ミステリと言う勿れ」(フジテレビ系、月曜9時)菅田将暉/伊藤沙莉/尾上松也

★★★★★

犯人捜しの過程で、大学生、久能整(菅田将暉)が世の中の常識や思いこみをことごとく覆していく新感覚ミステリー。原作の多弁キャラを菅田将暉がいい抜け感で立ち上げ、「真実はひとつなんかじゃないですよ」を立証しながらどんでん返しの雨あられとなる1話の逆転劇に心躍った。「人を殺しちゃいけないって法はないです」。教養と独自の価値観が思いがけない真理を突き、女性差別、いじめの本質など、この男の能書きが悩める人たちの処方箋となる展開も痛快。めきめき刑事の顔になっていく伊藤沙莉、貴重な陽キャラ尾上松也など、警察サイドも上等。この濃度とテンポで最後まで行けるなら傑作。

連続ドラマ「ドクターホワイト」(C)フジテレビ
連続ドラマ「ドクターホワイト」(C)フジテレビ

◆「ドクターホワイト」(フジテレビ系、月曜10時)浜辺美波/柄本佑/瀧本美織

★★☆☆☆

医学以外、知識も感情も抜け落ちている記憶喪失の少女が「誤診」を正し、患者を救う。最初が誤診であることは分かっているので、後半の「それ、誤診です」発動までが長く感じる。原作は少女の正体や医療界の闇がテンポのいいミステリーになっているので、2話現在、誤診を正すだけのワンパターンでもったいない。底知れない主人公を浜辺美波ならきちんと表現できると思うが、現状、お口にいちご生クリームつけながら知識や感情を吸収していく幼児段階で、話が進まない。新枠2作目。前作「アバランチ」のダークヒーローからテイストが変わりすぎて、ターゲット層不明で戸惑う。

ドラマプレミア23「ユーチューバーに娘はやらん!」(C)テレビ東京
ドラマプレミア23「ユーチューバーに娘はやらん!」(C)テレビ東京

◆「ユーチューバーに娘はやらん!」(テレビ東京系、月曜11時06分)佐々木希/金子ノブアキ/戸塚純貴

★★★★☆

1話は今期屈指のおもしろさ。結婚式で新郎に逃げられた32歳OLが、列席したユーチューバーとテレビ局員に同時告白されることに。1人で披露宴をやることにする新婦の心の動きが見事。針のむしろのバージンロードを堂々と歩く佐々木希がキュートでかっこよく、戸塚純貴と金子ノブアキが「本気であなたの隣に座ってみたい」と名乗りを上げたのも納得。式を成功させた両者のスキルに人柄がにじみ、佐々木希のスピーチも心に残る。爆笑と人間愛が渦巻くあの大傑作披露宴に私も列席したかった。2話は内輪ウケの感。「数年後にはテレビ局なんか消滅」「ポケベルみたいなもん」と常に攻めているテレ東。

火曜ドラマ「ファイトソング」(C)TBS
火曜ドラマ「ファイトソング」(C)TBS

◆「ファイトソング」(TBS系、火曜10時)清原果耶/間宮祥太朗/菊池風磨

★★★★☆

聴覚の異変で「これが最後の恋」と決めているスポ根女子と、曲作りのため恋をするミュージシャンの打算から始まる恋。1話だけで、養護施設、聴覚障害、難病、交通事故など韓国ドラマ要素を全部乗せ。血縁のない共同生活、疑似家族のきずなという岡田恵和脚本のいつもの設定も乗せ、テーマが大渋滞。とはいえ、最近の岡田作品の中ではメルヘン控えめ。初デートの3話から久々にちゃんと笑わせる岡田脚本が動きだし、急におもしろくなった。清原果耶、間宮祥太朗がしっかり物語を引っ張ってくれて、爆音のししおどしは今期いちばん笑った。この世界観だとサブカップル重要。菊池風磨と藤原さくらは頑張ってほしい。

水曜ドラマ「ムチャブリ!わたしが社長になるなんて」(C)NTV
水曜ドラマ「ムチャブリ!わたしが社長になるなんて」(C)NTV

◆「ムチャブリ!わたしが社長になるなんて」(日本テレビ系、水曜10時)高畑充希/志尊淳/松田翔太

★★☆☆☆

社長のムチャ振りで子会社レストランの社長になった30歳独身女子(高畑充希)の奮闘。現実社会の男女格差を吹き飛ばすような令和の女性リーダー像を見たかったが、「なんで私が社長?」のおろおろ状態を描くテンプレで、さすがに古いと感じる。年下男子(志尊淳)からのお前呼びや、女の顔面を殴った頑固職人の美化などいろいろ気がめいる。ヒロインの独り言ワールドもよく分からなかった。2話以降、高畑充希と志尊淳の丁々発止にテンポが出てきたので、薄味のお仕事ドラマより、ラブコメに重心を置いた方がすっきり楽しそう。まずは、この人の下で働きたいと思わせてほしい。

◆「となりのチカラ」(テレビ朝日系、木曜9時)松本潤/上戸彩/松嶋菜々子

★★★☆☆

主演松本潤×脚本遊川和彦。おろおろと中腰スタイルでよそ様の家の問題に介入していくおせっかいヒーロー。住人たちの暮らしをのぞき見して一方的に心配するテイストは、コメディーとはいえちょっとつらいかも。子どもの虐待、ヤングケアラーなどの社会問題を提起しているし、困っている人を少しだけ陽の当たる方へ連れて行く優しさも分かるだけに、通報せずに手旗信号とか、ズレた解決策にもやもやする。30分2本立てでさっくり見たい。考えすぎる主人公のてんてこ舞いを松潤が全力で演じており、うっかり認知症の人に「これだけは忘れないで」と口走る必死さに謎の説得力があった。

木曜劇場「#彼女が知りたい本当の○○」(C)フジテレビ
木曜劇場「#彼女が知りたい本当の○○」(C)フジテレビ

◆「ゴシップ#彼女が知りたい本当の○○」(フジテレビ系、木曜10時)黒木華/溝端淳平

★★☆☆☆

ここ数年、ネットニュースやフェイクニュースを扱った社会派の力作をNHKなどでよく見たので、PV至上主義の是非という切り口は周回遅れ感。取材せずコタツで記事を書く「コタツ記事」への問題意識は買いたいが、お荷物部署の存続危機、忖度(そんたく)しない無愛想ヒロイン、行きつけのご飯屋さん、終盤にキメぜりふなど、テンプレで作っているこの作品もなかなかのコタツ。どんよりと話が進まず、筋肉男子のシャワーシーンや床ドンなど謎のラブ要素にも戸惑う。「私は真実を知りたいんです」とキメ顔で言うヒロインに、月9の菅田将暉は「真実はひとつなんかじゃないですよ」とお伝えしてあげてほしい。

金曜ドラマ「妻、小学生になる。」(C)TBS
金曜ドラマ「妻、小学生になる。」(C)TBS

◆「妻、小学生になる。」(TBS系、金曜10時)堤真一/石田ゆり子/吉田羊

★★★★★

妻を亡くして10年。失意の底にいる夫のもとに、小学生の姿になった妻が帰ってくる。太陽のような妻(石田ゆり子)の人間味を丁寧に描いた演出と、しっかり石田ゆり子を宿らせ、母として家族を再生せていく毎田暖乃の子役力に圧倒される。見た目小学生の妻に「バカなの?」「顔を上げなさいよ」と尻をたたかれながら、再び人生に色を取り戻していく夫。D難度の再恋愛を堤真一がちゃんとコメディーベースで見せてくれて、おじさん×小学生の画角で“事案”の一線を越えないのもミラクル。ハッピーばかりではなさそうな今後の不穏と、それぞれの成長。このジャンルは最後が切ないのは分かっており、もう泣きそう。

◆「逃亡医F」(日本テレビ系、土曜10時)成田凌/森七菜/松岡昌宏

★★★☆☆

恋人殺害のぬれぎぬを着せられた天才外科医が、逃亡の先々で人命を救う。命を前にした医者の本能と、その姿を信じる人々の一期一会の人間ドラマがちゃんとあるのは好感。灯油ポンプや包丁など、生活用品を活用した手術シーンも、優秀さを映像化するに効果的。医療ドラマと90年代ポップスを組み合わせて大ヒットした韓国のあのドラマの影響か、昭和歌謡を聞きながら手術するトンデモ設定もぶっちゃけ面白い。南沙織「早春の港」、太田裕美「さらばシベリア鉄道」など、選曲が抜群すぎてクセになってきた。人助けばかりで真犯人探しの縦軸が全然動かないので、松岡昌宏との連携が待たれる。

土ドラ「おいハンサム!!」(C)フジテレビ
土ドラ「おいハンサム!!」(C)フジテレビ

◆「おいハンサム!!」(フジテレビ系、土曜11時40分)吉田鋼太郎/木南晴香ら

★★★★☆

「その女、ジルバ」など制作力に定評のある東海テレビ枠がまた快作。ステテコに腹巻きという昭和な頑固おやじと、男を見る目がまったくない娘3人のホームコメディー。7センチのネギを発端にした「やり残してこそ人生」の大演説から、シジミの小さな命の話まで、食べ物を通したハンサム哲学に笑いあり涙あり。家庭でも職場でも華々しい男に吉田鋼太郎は鉄板。会社サイドも激アツで、一杯のにしんそばで新人を大成長させた手腕にほっこり。3姉妹に木南晴夏、佐久間由衣、武田玲奈。キャスティングがハイセンスな制作者は信頼できる。

◆「DCU」(TBS系、日曜9時)阿部寛/横浜流星

★★★☆☆

海上保安庁に新設された架空組織DCU(潜水特殊捜査隊)の活躍。1話はヘリやダム湖の潜水など絵的に派手だったが、2話は漁港で遺留品捜しといきなり地味。海も陸も捜査権を持ち、海猿なのか刑事なのか複雑な世界観。陸の捜査がほとんどだった2話の方が普通の刑事ドラマみたいで見やすかった。阿部寛が強権キャラ。リーダー像の輝きとしては、外部組織との折衝力をきちんと描いた「TOKYO MER」の方が数段上と感じる。横浜流星の葛藤に青臭い色気あり。プロデューサーが強い権限で番組を作るTBS。ハリウッド共同制作という船頭の多い挑戦がどう出るか。固定客をがっちりつかんだ高視聴率はさすが。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)