先週末、新人監督2人の作品が初日を迎えた。

 澤田サンダー監督(41)は、一昨年に伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞となった「ひかりのたび」を完成させた。ファッション誌「ピチレモン」の専属モデルだった志田彩良(18)のデビュー作品ともなったのだが、自らの不動産ブローカーとしての経験も盛り込み、地方都市の暗部をモノクロで描いた異色作品だ。

 映画化実現までの長期間、メインキャストのベテラン俳優、高川裕也(54)と毎月1回の脚本検討会兼飲み会を重ね、改訂は13稿に及んだというから、こだわり方は半端ではない。

 もう1本は菊地健雄監督(39)の「望郷」。こちらは人気作家、湊かなえさんの原作に加え、出演者も貫地谷しほり(31)大東駿介(31)木村多江(46)緒形直人(49)と実力派をそろえた。菊地監督にとっては3本目の長編作品だが、昨年公開の「64」でも助監督を務めていたから、まだ新人と言ってもいいだろう。

 実は緒形が出演したのは、その「64」の現場で菊地監督と一緒に仕事をしたのが縁で、ロケ地の瀬戸内海・因島へとんぼ返りのようなスケジュールで主人公の父親役を好演した。

 「現地に到着していきなり背広を着て(役の)教員になるというのは正直きつかったのですが、ロケ場所の中学校の校長先生が島で採れた果物を差し入れてくださって、それをいただいた途端に五感が走りだして役に入れました。監督が因島のロケにこだわった理由もそのとき分かった気がします」と振り返る。

 そもそも緒形がかなり無理のあるスケジュールでこの作品に参加したのも、「64」助監督としての菊地監督の働きぶりに感心したからである。

 澤田監督の脚本直しに延々と付き合った高川といい、2人の新人監督の意欲作の裏には、それぞれベテラン俳優の心意気が感じられた。