女優の松岡茉優(23)が先輩女優、安藤サクラ(32)に「絶望した」と言う。ブルーリボン賞助演女優賞の受賞取材で、対象作「万引き家族」撮影中の話を聞いているときに心境を明かした。最初は「ん?」と疑問符の付くコメントだっだが、説明を聞くうちに安藤の圧倒的な演技力を目の当たりにして、自分の力不足を実感したということだと分かって半ば納得した。半ばというのは松岡自身、若手演技派の印象が強く、「絶望」は大げさだろうと思ったからだ。

「万引き家族」をご覧になった方なら分かると思うが、記憶に残るシーンといえば安藤が接見室で語るくだりだ。セリフ、表情の変化にぐいぐい引き込まれる。「接見室のシーンは実は私もリリー(・フランキー)さんも同じくらいの尺(長さ)撮影しているんですよ。でも、実際の作品で使われたのはほとんどがサクラさんのところ。是枝(裕和)監督にははっきりその差が見えていたんですね。負けたというと同じ土俵で戦ったみたいですけど、その土俵にも上がれていないというのが実感です」と振り返った。

もちろん客席からも安藤のうまさは実感できるが、「同じ演じる立場からすると、あからさまに『格の違い』を感じてしまうんです」とも。それが「絶望」につながったということらしい。

是枝監督は安藤の演技を「いきなり放り込まれたような場面でも、最初からそこに居て、地に足がついたというか、根の生えたように演じてしまう。それは他の人にはない感じですね」と評する。他の俳優との厳然とした差は監督の実感でもあるらしい。

松岡は「私だって時には愚痴を言えば、嫌みも言う。でも、サクラさんにはそういうところもなくて、いつもゆったり笑っている。欠点が見えない。そういう意味でも絶望なんです」と続ける。要は畏敬の対象ということだ。

この話を聞いてから、NHKテレビ小説「まんぷく」の安藤が、今まで以上に奥深く見えてきた気がする。