宝塚歌劇団の花組トップ娘役華優希、人気スター瀬戸かずやが10日、無観客ライブ配信となった兵庫・宝塚大劇場での退団公演千秋楽に臨み、本拠地に別れを告げた。

緊急事態宣言を受け、花組公演は4月26日から中止となっていたが、サヨナラショー予定だったこの日のみ、無観客で上演。同様の形式では初めて有料でライブ配信された。

ショーを終えると、華、瀬戸ともに、タカラジェンヌの正装、はかま姿であいさつしたが、ともに涙はなかった。

華は、今回の無観客ライブ配信でのサヨナラに感謝。「目にはっきりと見える確かなものが求められる今の時代、人の思いや愛が目にははっきりと見えず、不確実なものではありますが、いつも近くで見守り、支えてくださる方々の温かさから、そしてお客様の笑顔、拍手、寄せてくださるお心から、その存在を確かに感じさせていただき、そしてそれは本当に大きな力になるのだと気づかせていただきました」。先輩や仲間、無人の客席にも目をやり、周囲の支えにも感謝した。

前トップ明日海りお最後の相手娘役に迎えられ、現トップ柚香光に代わっても相手娘役を続け、2人のトップに支えられた。

「明日海りおさん、柚香光さん、すばらしいおふたりのお隣で、歴史の一端を担わせていただき、たくさんの方々に支えられてここまで歩んでこられましたこと、心から幸せに思います」と、感慨も口にした。

最も伝統ある花組一筋18年。「花組の彼氏」などとも呼ばれ、男役としての姿勢を示してきた瀬戸は、サヨナラショーでは黒えんびで群舞も披露し、ファンは歓喜に包まれた。

その瀬戸は、深々とお辞儀し「宝塚は私のすべてでした。ただひたすらに宝塚を愛し、男役を追求してきました」。18年を「険しい道のりだったけれど、大切なものを得ることができました。人の優しさ、たくさんの笑顔、たくさんの愛、人としての喜びをともに分かち合えるすべての方々との出会いが、私の宝塚人生での、大きな財産です」と続けた。

華と同じく、言葉では伝えきれない感謝の思いをあふれさせ、ファンにも「私を見つけ、ともに一喜一憂しながらも前を向いて一緒に歩んでくださった、ファンの方には心から感謝の気持ちでいっぱいでございます」とメッセージ。

ファンとの直接の別れがかなわず「再びお会いできるその時まで、皆さま、どうか心も体もお元気でいてください。そのときは必ず笑顔でお会いいたしましょう。そして、どうかこの先、宝塚の生徒が2度とこのような景色を見ることのない、そんな世界になることを強く願っております」と、コロナ禍の終息を心から願った。

華、瀬戸ともに言葉に詰まりながらも、晴れやかな表情であいさつ。これを受け、トップ柚香は「みなさまとこうしてつながり、ひとつとなる今日のこの日を励みに、一丸となって(仲間と)最高の日にすべくと、本日の日を迎えさせていただきました」。

仲間を「宝」と言い、華、瀬戸ら6人の卒業生の姿を見て「目に、耳に、心に焼き付けながら、それぞれが舞台、踊り、お芝居をしてまいりました」などと言葉を送った。

最後は「この愛よ永遠に-TAKARAZUKA FOREVER」で締めた。

同公演は、東京宝塚劇場で5月28日に開幕。華、瀬戸ら6人は、7月4日予定の東京千秋楽をもって退団する。