米俳優トム・クルーズ(58)が、人種差別問題に揺れるゴールデン・グローブ賞を主催するハリウッド外国人記者協会(HFPA)に抗議するため、受賞したトロフィーをすべて返上したことが明らかになった。

ゴールデン・グローブ賞を巡っては、HFPAの人種差別的体制への抗議としてネットフリックスやアマゾンなど大手スタジオが相次いでボイコットを表明する中、10日には授賞式の放映権を持つNBCテレビが来年の授賞式の放送を中止することを発表。その直後に、クルーズも抗議の意を込めて過去に受賞した3つのトロフィーをHFPA本部に送り返したとABCテレビやピープル誌などが報じた。

クルーズはこれまで映画「卒業白書」(1983年)で初ノミネートされてから2008年の「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」まで7度にわたって候補入りしており、「7月4日に生まれて」(90年)と「ザ・エージェント」(97年)では主演男優賞、「マグノリア」(00年)では助演男優賞を受賞している。クルーズ自身からはコメントは発表されていないが、今後は追随して他にもトロフィーを返上するスターが出てくる可能性もありそうだ。

同賞の受賞を恥じているのはクルーズだけではなく、テレビドラマ「ある家族の肖像/アイ・ノウ・ディス・マッチ・イズ・トゥルー」で今年の主演男優賞を受賞したマーク・ラファロも「この賞をもらったことを誇りに感じられないし、うれしいとも思えない」とSNSに投稿している。ラファロはNBCテレビが放送を中止すると発表したことを受け、「ありがとう」と決断を支持するツイートもしている。

また、女優スカーレット・ヨハンソンも過去にHFPAの一部会員からセクハラまがいの発言や性差別的な質問をされたことを明かしており、「ハーベイ・ワインスタイン(セクハラで有罪判決を受けて服役中の元大物プロデューサー)のような人物によって、価値のあるようなものにされていただけ」と同賞を批判。自身は何年もHFPAが主催する会見を拒否してきたと語り、業界仲間にも同様にボイコットするよう呼びかけている。

HFPAは会員に黒人記者が長年1人もいないことや黒人がメインキャストの作品への冷遇など人種差別的な組織体制が報道で明るみとなっているほか、会員への高額接待疑惑や俳優へのセクハラまがいの言動など相次ぐスキャンダルも取りざたされており、業界内から批判が殺到してボイコットを求める動きが拡大している。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)