歌舞伎俳優中村獅童が、20代のころのがむしゃらさを思い感無量の表情を見せた。

獅童は東京・渋谷のユーロスペースで上映中の、イランの巨匠、アッバス・キアロスタミ監督作品の特集上映「そしてキアロスタミはつづく」の舞台あいさつに登場。20代のころ、ミニシアターに通って同監督の作品をよく見ていたという。

獅童が通っていたころのユーロスペースからは場所を移転しているが、獅童は「チラシを1枚1枚見て、次はこれを見に来ようとか、ロビーで上映を待っている時の感じとか、すごく思い出しました。がむしゃらに、中村獅童という名前を自分で大きくしよう、知ってもらおうという思いだったのを思い出します。明日からまた頑張れそう」と話し、こみ上げるものをこらえるような表情になった。

同監督作品と出会ったことは「役者人生においてものすごく大きい」とした獅童。出会った当時の自分の環境とともに、役への自然なアプローチを学んだという。

「経験を積むとテクニックが身について、いつの間にか器用になる。キアロスタミ監督の作品に出てくる少年の演技を見ると、そんなことは考えてない。キャリアを重ねても純粋な気持ちを忘れちゃいけない」とも話した。

最近、長年の念願だった、ある監督の作品に出演が決まったそう。獅童は「発表されたら、あの時話してたのはこれか、と思ってください」と期待させ、「その監督は、前の日に役者が考えて考えて持ってくる演技が嫌いだと思います。本番も1回で撮るとか。どう自然な姿を見せるか、自然にアプローチするか」と、キアロスタミ監督作品に通じるところを語った。新しい作品でどう生かされるのだろうか。【小林千穂】