TVer見逃し配信が2週連続歴代最高記録を更新し話題を呼んでいるフジテレビ系「silent」(木曜午後10時)など、10月期の複数ドラマのスタッフの中で目にする、共通の名前がある。今クールで6本のドラマを担当するフードコーディーネーター「はらゆうこ」さんだ。

はらさんはドラマ現場で劇中に登場するメニュー、材料の調達、仕込みから当日の盛り付けまで担当。直近では、テレビ朝日系で7月期に放送されたドラマ「六本木クラス」で、竹内涼真演じる宮部新が店長を務めた居酒屋「二代目みやべ」に出てきた、色とりどりの料理も記憶に新しい。

はらさんは8年間の公務員生活を経て、赤堀料理学園6代目校長の赤堀博美氏に師事し、料理の道へ。赤堀氏のアシスタントを3年半経験し、独立。現在は一児の母でありながらフードコーディネーター、料理家、調理師として、芸能分野以外でも活躍する。

厳しい両親のもと、料理への道は反対され、一度は公務員に。29歳で全く違う環境に飛び込んだ。一見、遅いスタートにも見えるが、「この仕事は逆に、すごく若いとなれないです」と話す。「当時は遅いと思いましたけど、この仕事は現場の監督さん、役者さん、広告代理店、企業の営業の方など、いろんな方とのコミュニケーション能力が必要なんです。今思うと20代で目指していたら、ここまで来なかっただろうと思います」。料理を作るだけでなく、さまざまな経験が監督や出演者との意思疎通に役立っている。

結果として、現在まで200本以上のドラマや映画にフードコーディネーターとして携わった。「好きなことをしたい私に『一番を取らなくても人に負けずに好きなことってなに?』と祖父母に言われました。料理なら負けずに働けるし、努力も嫌じゃない。好きなことを仕事にするならこれだ」とやりがいを見つけられる仕事に、30代半ばでたどり着いた。

独立後、仕事関係者に言われた言葉が忘れられない。「メニューを提案して、レシピを書いて、スタイリングをして、当日も一人で料理をして盛り付けして、カメラマンもやる。『クリエーターみたいだね』って言われて。“料理”という形に自分が思うことを表現する。これってクリエーターと一緒だ」と思えるようになった。

自分の性分に合致する仕事に出会うために、スタートする時期は関係ないというはらさん。「その時には遅いと思っていても、今だと思うタイミングがある。それが自分のタイミング」と語っている。【加藤理沙】

 

◆はらさんのこれまでの主な担当ドラマ

「僕とスターの99日」(11年、テレビ朝日系)

「リーガル・ハイ」(12年、フジテレビ系)

「ショムニ」(13年、フジテレビ系)

「S~最後の警官~」(14年、TBS)

「私の嫌いな探偵」(15年、テレビ朝日)

「ダメな私に恋してください」(16年、TBS系)

「僕のヤバイ妻」(16年、フジテレビ系)

「小さな巨人」(17年、TBS系)

「監察医朝顔」(19年、フジテレビ系)

「極主夫道」(20年、日本テレビ系)

「俺の家の話」(21年、TBS系)

「競争の番人」(22年、フジテレビ系)

「六本木クラス」(22年、テレビ朝日系)

「クロサギ」(22年、TBS系)

「エルピス」(22年、フジテレビ系)

「silent」(22年、フジテレビ系)

「親愛なる僕へ」(22年、フジテレビ系)