ロシアの侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領が、現地時間12日に米ロサンゼルスで開催される第95回アカデミー賞授賞式へのリモート出演を断られたことが明らかになった。

同大統領がアカデミー賞授賞式の出演を断られたのは、昨年に続いて2年連続となる。米ヴァラエティ誌は、授賞式へのリモート参加をハリウッドの大手タレントエージェントを通じて申請したものの却下されたと情報筋の話を伝えている。

理由は明らかにされていないが、米ワシントン・ポスト紙は、侵攻から1年が経過して戦争が長期化する中、バイデン政権の継続的な支援に対して半数以上の国民が「ウクライナへの関与を望まない」とする世論調査の結果が最近発表されたことを受けてのものだと伝えている。

昨年の授賞式で出演が却下された際には、授賞式のプロデューサーであるウィル・パッカー氏がロシアの侵攻による犠牲者が白人であることから有色人種が被害を受けた戦争を無視してきたハリウッドとしてウクライナへの支援とウクライナ情勢だけに注目することを懸念していることが理由だとの臆測が出ていた。

ゼレンスキー大統領は今年1月にロサンゼルスで開催されたゴールデングローブ賞授賞式では、ウクライナ支援を続ける俳優ショーン・ペンから紹介され、「ウクライナでの戦争はまだ終わっていないが、潮目は変わりつつある。勝者はすでに明らかになっている」と動画メッセージを寄せていた。また、先月も世界3大映画祭の1つ、ベルリン国際映画祭の開幕セレモニーにリモートで参加し、「私たちの領土を解放するためにあらゆることをする」と支援を改めて訴えたばかり。

昨年は、5月にカンヌ国際映画祭の開幕式でもスピーチしている他、米音楽の祭典グラミー賞授賞式でも事前収録メッセージが会場で流され、9月にはニューヨーク証券取引所で取引開始を告げるオープニング・ベルにもリモート参加している。

ウクライナ情勢に関するドキュメンタリーの撮影のため、侵攻当日に首都キーウを訪れていたペンは、昨年のアカデミー賞授賞式でゼレンスキー大統領の演説が実現しなければ、過去に自身が受賞したオスカー像を溶かすと発言していた。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)