MBSラジオ「ありがとう浜村淳です」が50年の歴史の幕を閉じた。正確にいえば、終了したのは月~金曜分で「ありがとう浜村淳です土曜日です」は4月からも放送は続く。それでも、いわゆる「帯」の生放送で50年間、パーソナリティーを務めてきたのは快挙であり、ラジオ界の宝でもある。

「浜村さん、年齢はおいくつですか?」

「アラン・ドロン(フランスの映画スター)と同じ年です」

おなじみ浜村節のひとつだが、往年の大スター、アラン・ドロンさえ、今の若い世代はピンと来ないだろう。それほど浜村さんの現役生活は時代を超越してきた。

記者が中学生のとき、夏休みにアルバイトをして、ちょっとおしゃれなラジオを買った。FMも海外放送も受信できるラジオだったが、聞いていたのはAMばかり。受験勉強をするふりをして深夜放送、ラジオの世界に夢中になった。

MBS「ヤンタン」、ABC「ヤンリク」、KBS「ズバリク」など、日替わりで好みのDJを聞きまくった。OBCは「バチョン」。30代だった浜村さんは木曜夜の担当。他の曜日では、笑福亭仁鶴さん、コメディNo.1、桂春蝶さん(先代)らが軽妙なトークを聞かせていた。

よく考えれば、他のメンバーは落語や漫才のプロ。一時期、漫談家として吉本の劇場に立つこともあったが、本業が何かよくわらかない浜村さんの存在は異色だった。思い返せば「ラジオのプロ」であり、しかもFMに比べてリスナーの年齢層が高く、音楽よりもおしゃべり中心の地上波ラジオが天職だったのだろう。

「ありがとう」での浜村さんといえば大人向けの落ち着いた語り口だが、50年前は若かった。中学生や高校生相手に、オカルト的な話題やミステリアスな超常現象などを語っていた。翌日の学校では「昨日のバチョン聞いた? 怖かったなあ」と話題になったものだ。

時代は変わり、AMラジオそのものがFMに移行しつつある。MBSラジオは現在、1179(AM)と90・6(FM)両方で楽しめる。記者が浜村さんのラジオを初めて耳にしてから半世紀あまり。「ありがとう」はラジオ界の誇りであり、浜村さんのようなラジオ・スターは二度と出まい。【日刊スポーツ元放送担当=三宅敏】