東京映画記者会(日刊スポーツなど在京スポーツ紙7紙の映画担当記者で構成)主催の第68回(25年度)ブルーリボン賞が27日までに決定し、妻夫木聡(45)が15年ぶり2度目の主演男優賞、広瀬すず(27)が主演女優賞を初受賞した。
2人は、昨年末の日刊スポーツ映画大賞でも受賞し“2冠”となった。また、山田洋次監督(94)が48年ぶりに監督賞を受賞。今年度の日本映画界を席巻する「国宝」(李相日監督)も、作品賞に輝いた。授賞式は2月17日に都内で開催する。
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ブルーリボン賞助演男優賞は「爆弾」(永井聡監督)の佐藤二朗(56)に決まった。爆破を予言する謎の中年男を怪演し、評価された。自他ともに認めるはまり役。反響の大きさにも驚いたという。
-強烈なキャラクターを演じました。
佐藤 お世話になったプロデューサー、これまで共演してきた人たち、そして久しぶりという友人まで。これほど大きな反響をいただいた作品は初めてですね。上地雄輔からえらく長文のメールをもらったり、寺脇康文さんから絶賛のメールや電話までもらって…。呉勝浩さんの原作小説に出てくるこの中年男は驚くぐらい僕に似ているんです。変哲のない小太り、中日ドラゴンズファン、そして主舞台の取調室が野方警察署なんですけど、僕が東京で初めて住んだのが野方(中野区)なんですよね。運命的なものを感じました。
-役作りにも気合を感じました。
佐藤 役者が丸刈りになるのはそれなりの覚悟がいるのですが、それに加えて10円ハゲもしっかり入れました。「二朗さん苦労してるんだな」と思われて、説明するのも面倒なので(笑い)半年間はずっと帽子をかぶって過ごしましたね。呉先生には「今までにないヴィラン」という思いがあり、奥の深い狂気を演じなければ、と。邦洋とてつもなく魅力的なヴィランがいて、それぞれ悪の哲学を持っていますが、このスズキタゴサクにはそれがない。だれもが持っていて、フタをしている悪意をついて、あなたもそうでしょ、と。
-共演陣との間になんともいえない緊迫感がありました。
佐藤 染谷将太、渡部篤郎、最後に山田裕貴という一線級の俳優たちが入れ替わり僕の前に。一流の俳優の芝居を特等席で見られる、日々セッションができるという。撮影中は毎日妻に「オレ今楽しいわ」と。原作が悪魔的に面白いということもあるんですが、みんながそれを知っているからあんな空気が生まれたんですね。渡部さんが「みんなすごいことをやっている」と言っていましたが、確かにそんな実感がありました。山田裕貴は主役として、その面白さを少しでも取りこぼしちゃいけないという意識があって、いつも原作本を持ち歩いて監督や僕に相談を続けていましたね。
-怖いくらいの迫力でしたね。
佐藤 取材ではよくコミカルからシリアスまでいろいろやられますね、と言われますが、僕にとってコミカルとシリアスは同じ地平にある(笑い)。分けていないつもりです。笑っていたら、あれっ涙出てきた、とか。怒っているのに笑っちゃうとか実際にあるじゃないですか。そういう言葉にはできない人間の感情に面白みを感じてきました。だから、今回、笑いと狂気のはざまとか評していただいて本当にうれしかったです。
-出来上がった作品をご覧になってどんな感想を。
佐藤 ワーナー(配給)の試写室で最初に見たんですけど、面白くて途中からうれしくなっちゃって。ありがとう永井さん(監督)と。若い女性観客からの書き込みでは「怖くて、佐藤二朗の顔が見られなくなった」とか(笑い)うれしかったですね。口コミでどんどん広がりましたから、永井さんもエゴサしながら晩酌するのが楽しかったみたいですよ。
-そもそも俳優の出発点は。
佐藤 小学4年の時の発表会で、お芝居がバカみたいに受けたのがきっかけです。あの時に覚えた演じる喜びがずっと変わらない気がします。役者になるのは夢ではなく運命という思いがずっとあります。
-20代は会社勤めもし、現在の立ち位置までには紆余(うよ)曲折がありました。
佐藤 (劇作家、演出家の)鈴木裕美さんにはものすごくお世話になったし、ものすごく怒られました。20代の頃も俳優として買ってくれていたんですけど、その頃言われたのがこのままではダメになるよ、と。その時はハイ、ハイと軽く返事してましたけど。その意味が本当にわかったのは40代になってからですね。20代の頃はただただたくさん仕事がしたくて、何でもかんでも自分でゴールを狙うような芝居でした。それが、パスをしてゴールをアシストする楽しさが実感として分かってきた。今回、文字通りセッションを楽しめたのも、それなんですよね。自分で考えてきたものを1回ゼロにして共演者と高め合っていく。それは楽しいし、結果それが作品のためにもなりますからね。



