シングザットソングの吉田隼騎手が、新たな一面を引き出した。それがスタミナを兼ね備えた「持続型」の末脚だ。これまではゲートに課題があり、後方から上がり33秒台(3戦いずれも最速上がり)の脚を使ってきたが、今回はスタートが決まって好位差しに転じた。その分、上がりは35秒4とかかったが、ハイペースでも最後まで息切れせず、後続の追い上げを振り切った。

逃げたエコロアイの前半3ハロンは33秒2。この時期の3歳戦としてはかなり速い。逃げ馬は17着に沈み、2~4番手のリバーラ、トラベログ、ジョリダムも2桁着順と坂で完全に止まった。先団6頭の中で掲示板に載ったのはシングザットソングだけ。2着ムーンプローブは4角を9番手、3着ジューンオレンジも同13番手という典型的な追い込み競馬だった。

この流れを第1集団につけてしのぎ切ったのだから大したもの。しかも、残り600メートルから前を交わしにいく積極策。追い込み馬にも一瞬の切れで勝負する馬、いい脚を長く使う馬の2パターンあるが、シングザットソングは後者だろう。鞍上もそれが分かっているから、早めに動くことができた。

ゴール前は首差まで迫られたが、こういう競馬ができれば、桜花賞ペースにも対応できる。流れが遅ければ前へ、速ければ後ろでためる。見た目には「ぎりぎり」粘り込んだという印象だが、ペースと前半の位置取りを考えれば着差以上に強い。桜本番でも上位争いできるポテンシャルをあらためて感じた。