マッドクールは仕掛けのタイミングが絶妙だった。好スタートからいったん3番手に控えたが、4コーナーを回ると内ラチ沿いから一気に前へ出る。この飛び出しが頭差の勝利に導いた一番の要因だろう。

逃げたビクターザウィナーの前半3ハロンは34秒9。「小雨、重」というコンディションを考えても遅い。後半3ハロンが34秒0なのを見ても、明らかな前残りの競馬だ。上位4頭で追い込んできたのは、2着ナムラクレア1頭。この流れを読み切った坂井騎手の好判断といえる。

マッドクールは540キロの大型馬。スピードの持続力で勝負するタイプ。後ろを待っていれば、切れ味のある馬に差し込まれる危険がある反面、早めのスパートでも押し切ってしまうパワーがある。それに懸けた。ゴール前はぎりぎりだったが、もしワンテンポ仕掛けが遅れたら、差し切られていたかもしれない。

直線でラチ沿いにつけた進路選択も見事。前日、当日の競馬から、意外と内が伸びるという傾向を頭に入れていたこともあるし、ラチに沿って走れる分、ブレも少なく済んだ。大胆なようで緻密に計算されたファインプレーが、悲願のG1制覇をもたらした。

マッドクールで高松宮記念を制してガッツポーズで引き揚げる坂井騎手(撮影・白石智彦)
マッドクールで高松宮記念を制してガッツポーズで引き揚げる坂井騎手(撮影・白石智彦)