調教師の妻が世界の舞台に挑戦する。高橋康之調教師(49)の妻・紘子さん(45)は、4月30日に開催された既婚者のためのコンテスト「ミセス・インターナショナル2022」でグランプリを獲得。今週22、23日に米テネシー州で開催される世界大会に、日本代表として挑む。今回の「ケイバラプソディー ~楽しい競馬~」では、マイクこと藤本真育記者が、妻の挑戦を支える高橋康師の信条、理念に迫る。

世界で戦う妻を支える調教師がいる。「夫婦といえど、一個人の人生。やりたいことをすればいい」。高橋康師は、妻・紘子さんが44歳を迎えた昨年、ミセス・インターナショナルに出場するという大きな決断に対し、快く背中を押した。「新しい挑戦に1歩を踏み出すのは、すごく勇気のいること。そういう目標を見つけて努力するのは大切だと思う」。この考え方は調教師・高橋康之のモットーでもある。

紘子さんが挑むのは、42年の歴史がある世界大会。出場までの道のりは険しく、何度も折れそうになったという。

紘子さん しんどくてやめようと思ったこともありました。そんな時にやっちゃん(高橋康師)に相談すると『自分がやりたくて始めたことだし、やめたかったらやめてもいいんじゃない』って言われたんです。そのときにやりたくて始めたんだから、もう少し頑張ろうと思えました。

隣に座る夫の顔を見ながら笑顔で当時を振り返る。SNSの更新やパーソナルトレーニング、スピーチの練習などハードな日々を支えたのは、相手の気持ちを否定せず、受け止めて、自分自身で見つめ直すきっかけを作る、という師の信条だった。

師は厩舎スタッフに対しても同じ姿勢で向き合う。馬が、競走馬としていかに幸せに過ごせるかを個々が考える環境を作る。

「ああしろ、こうしろは言わないです。ミスしても怒らないですね。馬と真剣に向き合う中で、結果を出すという目標に向かって個々が考え、行動するように、あえて口出しはしないです。そうするなかで助けを必要としている時には、助言や実践をする。そのときは僕の出番です」

馬も人も同じ。世界という大舞台に臨む妻に対してもアドバイスは変わらない。「大会に向けて努力してきたことを発揮するだけ。自然体で意気込まずに頑張ってほしいです」と笑顔でエール。紘子さんは初めてミセスインターナショナルに出場し、世界への切符を手に入れた。その活躍の裏側には、高橋康師が今まで、競馬の世界で培ってきた理念が生かされている。【藤本真育】

◆ミセス・インターナショナル 21~56歳の既婚女性が参加するコンテスト。「信条」や「社会貢献」への思いが評価基準となり、上位3人に米国・テネシー州で行われる世界大会への出場権が与えられる。昨年、日本代表として参加した和嶋真以(わじま・まい)さんが、42年の歴史上、日本人として初めてトップ16人のファイナリストとして入賞している。

(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー ~楽しい競馬~」)