昨年に勇退した角居勝彦元調教師(58)が、今夏から石川県珠洲市で新たに引退馬の牧場を開設する計画を明らかにした。月イチ連載コラム「Thanks Horse」で構想を示した。新組織「みんなの馬株式会社」を立ち上げ、30頭前後を受け入れる見通し。引退馬支援に加え、地域の活性化への貢献も目指す。

今回は奥能登で進めている新プロジェクトについてお伝えします。現在は「奥能登・馬プロジェクト」として3頭の引退馬とともに活動していますが、2月に「みんなの馬株式会社」という新たな組織を立ち上げました。今のタイニーズファームと同じ珠洲市内にあるハーブ園の跡地を取得して、30頭前後の引退馬を受け入れられる牧場を開設する計画です。今は汗だくになりながら用地の草刈りをしています(笑い)。

すでに公式サイトを立ち上げ、8月には馬の受け入れを始められるように準備を進めています。ゆくゆくは馬とふれあえるテーマパークのような施設として、行き場を失った馬たちが余生を過ごすだけでなく、地域の観光や雇用にも貢献できればと考えています。里山の原風景に囲まれれば心がホッとしますし、馬も人間も本来のリズムを取り戻すことができるはずです。

海にもすっかり慣れたレッドアルティスタ(左)とデッセシャテーヌ(角居氏提供)
海にもすっかり慣れたレッドアルティスタ(左)とデッセシャテーヌ(角居氏提供)

最初はドリームシグナル(せん17)1頭で始まった今の牧場も、2月にレッドアルティスタ(せん10)、4月にデッセシャテーヌ(牝9)が加わり、にぎやかになりました。新入り2頭は牧場だと体力的に強い立場ですが、外へ出ると怖がりなのでドリームシグナルを先に行かせて後ろをついていきます(笑い)。最初は波が怖くてなかなか海に入れなかったのが、最近は慣れてきました。3頭とも、ふれあいやホースセラピーで活躍してくれています。

先月の地震では珠洲市で震度6弱を記録しましたが、馬も人も厩舎も無事でした。もともと人工物が少ないこともあり、大きな被害や混乱はなかったようです。豪雪地帯のため、柱の太い建物が多く、地震に強い地域といえるのではないでしょうか。安心して暮らせる場所だと思います。馬たちと一緒に、里山や里海の魅力を発信して、たくさんの人を呼び寄せられるようにしていきたいです。