皆様いかがお過ごしでしょうか。今回は秋最初のG1・スプリンターズSですね。夏のスプリントシリーズを見ていると、次々と主役のお馬さんが出てきているし、そこに夏をお休みに充てていたお馬さんたちも加わり、なかなか難解なレースになるのではないかと感じます。

さて、日を同じくして凱旋門賞が行われます。今年もたくさんの日本馬が戦いの地へ向かいました。中でも、このコラムでなじみのディープボンド号は今年も出走予定という事で、もう私は今からワクワクしています。

そして、前哨戦のドーヴィル大賞で惜しい2着だったステイフーリッシュ号の出走も楽しみにしています。というのも、この2頭を担当されている助手さんが私も相方さんもとてもお世話になっている方々で、つい先日、わが家では「知人が2人も凱旋門賞に出走予定なんて、競馬の世界は狭いと言ってもなかなかないよね」なんて話で盛り上がりました。私も相方さんも交友関係がそんなに広くないのですが、そんな2人の共通する知人・友人はまれなので応援には力が入ります。

その上、皆さんもご存じのように、ディープボンド号の母・ゼフィランサス号は現役時代に担当させていただき、人生初のG1の舞台へ私を連れて行ってくれた思い出深い1頭で、応援に力が入らないわけがありません。

さて、先ほども書きましたが、私はお友達や知人が少ないです(笑い)。そんな少ないお友達の中のほぼ9割は「お馬さんがつないでくれたご縁」だと思います。お馬さんがいなければ、厩務員さんというお仕事をしていなければ、出会えていなかった方々ばかりです。

前にも書いたかもしれませんが、私が担当したお馬さんのほぼ9割は牝馬で、そのうちの8割は同じ牧場の生産馬でした。なので、このコラムに出てくるお馬さんのお話のほぼ9割はその生産牧場のお馬さんです。文章がややこしい。なんか割合の問題みたいになっていますね(笑い)。

その牧場は北海道にある村田牧場さん。担当させていただき、たくさん勝たせていただき、2回もG1の舞台に立たせていただいたお馬さんたちがいて、みなお母さんになり帰っていった故郷です。そして、私にとっての第2の故郷でもあります。

ここ3年ほどはごあいさつに伺えていませんが、今でも担当させていただいたお馬さんの産駒が勝った時など電話でお話しさせていただいています。厩務員さんの頃は毎年、札幌出張に行かせていただく時に、辞めてからも出産シーズンが落ち着いた時期をみて、社長と奥さんと担当させていただいたお馬さんたちに会いに、年に1度はお邪魔していました。

生産牧場というのはその名の通り受胎をしているお馬さんや、これから受胎をするお馬さん、そして仔馬がいる牧場で、一般的にはあまり見学などはできません。それは外部から、菌やウイルスなどを持ち込まないようにするという防疫の関係もあります。

私は、へいはた牧場の育成部で修業させてもらっていましたが、車で5分ほど山を登っていくと生産部がありました。生産部の厩舎にお手伝いに行くときは必ず消毒をしてから入るように教えられていました。その教えもあって、生産牧場に伺う時は必ず車を降りる前に靴や服を替えるようにしています。

そんな中、私の「担当馬に会いたい」というワガママなお願いを、作業時間にもかかわらず「今年もよく来たね」と迎えてくださる村田牧場の皆さんや、担当馬の産駒が勝って泣きながら電話をした私に、「自分の子供と同じだよね」と優しくお声がけくださる奥さんと「この状況が落ち着いたらお子さんといらっしゃい」と言ってくださる社長に出会えたのも、厩務員さんという仕事をし、お馬さんがつないでくれたご縁やなと感じるし、本当に感謝しかありません。

こうしてみると厩務員さんになれへんかったら、どうなってたんやろう(笑い)。そんな私が担当馬のご縁でお友達ができた事があります。

突然ですが、皆さんは「水色兄さん」をご存じでしょうか? 競馬ファンの方には結構有名だとは思いますが、ある漫画家さんが彼を厩舎カラーの水色で描き、そう命名しはりました。彼の名前は橋本君といって、私は彼が水色兄さんになる前からのお友達です。

きっかけはこのコラムではなじみのメッチャンことメリュジーヌ号を担当していたことでした。橋もっちゃん(と私は呼んでいる)が「メリュジーヌの妹を担当してるねん」といわはったので「会わせて ! 」とお願いをして厩舎に行かせてもらいました。

そこにいたのはクロワラモー号でした。クロワちゃんは馬体に丸みのある黒鹿毛の女の子でした。お父ちゃんが違うので当たり前かもしれませんが、スレンダーな鹿毛のメッチャンとは少し違いましたが、2人ともめっちゃ美人やなと思ったのを思い出します。

そこから橋もっちゃんとは、姉妹の情報交換やお互いのレースの応援などをするようになり、私が厩務員さんを辞めてからも変わらず仲良くしてくれる貴重なお友達の1人です。

いつも橋もっちゃんが皆を集めて食事会のセッティングをしてくれて、私の止まらないトークを聞いてくれる、年下やけど頼れるイケメンな「水色兄さん」です(笑い)。「コロナが落ち着いたらまたみんなで会おう」と言ってから直接は会えていませんが、今もTV越しに応援しています。

というわけでこれからもお馬さんがつないでくれたご縁を大切にしつつ、日本で、世界で戦うお馬さんやお友達の応援を全力でしようと思います。

今回はこの辺りで。皆様ごきげんよう。

<左>現役時代の坂井さんとメリュジーヌ号(姉)です。<右>クロワラモー号(妹)と橋本助手です
<左>現役時代の坂井さんとメリュジーヌ号(姉)です。<右>クロワラモー号(妹)と橋本助手です