欧州ではここまでクラシックを除く芝2400メートルのG1が、3競走行われました。それぞれの出走頭数は6月のコロネーションC(2410メートル)が6頭(フクムが優勝)、今月のサンクルー大賞は9頭(アルピニスタが優勝)、パリ大賞は6頭(オネストが優勝)、そして23日土曜のG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスSも6頭立てになる見込みです。

今年の英ダービー馬デザートクラウンが、軽い脚部不安で戦列を離れ、昨年の英ダービー馬アダイヤーや愛ダービー馬のハリケーンレーンも休養中とあって頭数がそろわなかった面はありますが、上半期の締めくくりとなるキングジョージ6世&クイーンエリザベスSは昨年も5頭立て。コロナの影響のあった一昨年はわずか3頭立てと、少頭数での競馬が続いています。

2400メートルの重賞に馬が集まらないのは今に始まったことはありませんが、昨今の短距離やマイル戦の盛り上がりを見ると、余計に2400メートル路線の層の薄さに目がいきます。その要因はさまざまですが、筆者は仏ダービーの距離短縮の影響が大きいと考えています。

仏ダービーが2400メートルから2100メートルに距離を短縮したのは、今から17年前の05年でした。目標とするダービーの距離が変わったことでフランスの生産者は2400メートル戦に強い競走馬から、もっと短い距離で能力を発揮する馬づくりに心血を注ぎました。

当然、重用される種牡馬も変化し、その結果2100メートルの仏ダービー優勝馬が凱旋門賞を制したのは、一昨年のソットサスのみということになっています。

これはフランスだけにとどまらず、欧州の生産界が仏ダービーの距離変更の前あたりから緩やかに「スピード偏重」にかじを切っていたことと重なって、ニジンスキー系やミルリーフ系に代表される2400メートル向きの血統を色濃く備えた馬を減らしたという推測です。

欧州(英、仏、愛、独)の芝2400メートルのG1競走は、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSと凱旋門賞を頂点に年間17競走(うち3歳限定戦6競走)が施行されていますが、近年の出走頭数はどれも10頭を割ることが多く、この傾向はこれからも続くことが予想されています。欧州にはガリレオ血脈という大遺産があって、2400メートル路線での強さは当分揺るがないかも知れませんが、2400メートル=非主流が長くなればレベルダウンは避けられません。現在の日本馬はすでにこれに抗するだけの能力に達しており、ここ数年の間にも凱旋門賞はもちろん、キングジョージを勝つ馬も現れるのではないでしょうか。

さて3歳有利が予想されるキングジョージですが、筆者は今年の3歳牝馬の実力ナンバーワンと評判の高いエミリーアップジョンの走りに注目します。ランフランコ・デットーリ騎手で臨んだG1英オークスはゲートで出遅れた上、直線も大外を回るロスがあってチューズデーに短頭差の2着。勝てたはずのレースを落としたゴスデン調教師とデットーリ騎手との間に生じたギスギスとした感情を静めるためにも、さすがデットーリとうならせる神騎乗を見せてもらいたいものです。

◆キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(アスコット・芝2400メートル)

枠番(馬番)馬名 馬齢 重量 騎手 調教師 オッズ

1(1)ブルーム 牡6 61キロ ムーア A・オブライエン 21・0

2(2)ミシュリフ 牡5 61キロ J・ドイル J&Tゴスデン 4・5

3(6)エミリーアップジョン 牝3 55キロ L・デットーリ J&Tゴスデン 3・5

4(3)パイルドライヴァー 牡5 61キロ PJ・マクドナルド W・ミューア&C・グラシック 34・0

5(4)トルカータータッソ 牡5 61キロ R・ピーヒュレク M・ヴァイス 13・0

6(5)ウェストオーヴァー 牡3 56キロ C・キーン R・ベケット 2・5

(ターフライター奥野庸介)

レース成績などは2022年7月22日現在

松本清張。上下巻900ページ超え!
松本清張。上下巻900ページ超え!