開業4年目の加藤士津八師(37)がフローラS(G2、芝2000メートル、24日、1~2着馬にオークス優先出走権)で重賞初勝利を目指す。開業した19年は6勝に終わったが、20年、21年は2桁の勝ち星を積み重ね、今年もすでに5勝と軌道に乗ってきた。騎手時代は名門国枝厩舎の調教で名馬の背中を知り、欧州や中国の競馬も見て回った。助手時代にはハナズゴールとともにオーストラリアに遠征。さまざまな経験を糧に自分なりに走る馬の理想像を描き、探してきた。「騎手時代だけではなく、助手時代や調教師になってから北海道に行ったりしていろいろな馬を見てきた」。そんな師が一目ぼれしたのがゴールデンアワーだった。

20年北海道セレクションセールで巡り合った。「馬体が魅力的で、歩様もきびきびしていて良かった」と当時を振り返る。馬主の藤本栄史氏に直訴し1300万円(税抜き)で落札した。オーナーとは育成牧場の紹介で知り合い意気投合。中央の馬主になって最初に持った馬から預かってきた。「競馬の難しさも理解してくれています。馬についてもよく意見交換をしています」と信頼関係は深い。

見つけ出した原石は、期待に応えるように走った。昨年9月にデビュー。今月10日の初勝利まで5戦を要したが、崩れたのは1度だけ。「着を外したのは1800メートルだったし、2000メートルではいい競馬。力も付けている」と評価する。新馬の頃にあった体の弱さが一戦ごとになくなってきた。「今なら中1週でも使える。こういう変化のある馬が走る馬なんだと思います」と、幼駒の頃に見込んだ素質が今開花を迎えている。「自分で見て勧めた馬なので責任感がひと味違いますよね。この馬で重賞を勝ちたい」。厩舎初の重賞制覇をはっきりと意識して送り出す。【舟元祐二】

◆加藤士津八(かとう・しづや)1985年(昭60)2月2日、茨城県生まれ。父は85年にシリウスシンボリに騎乗しダービーを制した加藤和宏現調教師。03年に国枝厩舎所属で騎手デビュー。06年に父和宏厩舎に所属変更、09年からフリー。JRA通算1054戦20勝。12年から父の厩舎で調教助手に転身。18年に調教師免許を取得し、翌年開業。JRA通算758戦46勝(21日現在)。重賞には4頭送り出し、21年ファンタジーSのオルコス(6着)が最高着順。