水曜朝、雨が降っているものだと思って、カッパを着て行くと、すでに雨はやんでいました。風が強く吹いて、爽快でしたが…。ウッドチップや芝コース、ダートコースでは午前5時半の馬場開場後、勢いよく追い切っていく馬たちの姿がありました。
午前6時過ぎ、2歳馬を示す緑色のゼッケンを着けた馬たちが馬場へ向かいます。角馬場で運動した後、向正面から芝コースの2コーナー奥にある引き込み部分へ。ここが芝コースの追い切りのスタート地点。実際にレースで走る芝コースでの追い切り、いわゆる「レースコースギャロップ」を行う馬たちです。
美浦と栗東、東西のトレセンにも芝コースはあって、そこで追い切る馬たちを見ることもありますが、それほど数は多くありませんし、やはり本物の芝コースで追われるのとは趣が大きく、異なります。競馬場の芝コースで躍動する馬たちを見ることができる「レースコースギャロップ」は競馬場に滞在して調整する人馬にとって準備という点で効果が大きいですし、それを生で見ることができるのは、とてもワクワクします。記者にとっても、滞在競馬の醍醐味(だいごみ)の1つと言っていいかもしれません。
イギリスやフランス、アイルランドなど、欧州の有力厩舎もレースが近づくと、厩舎の近くにある競馬場や、出走させるレースが行われる競馬場の芝コースで追い切りを行います。ジャパンCや安田記念で外国馬が来日した時は「芝コースで追い切ってくれないかなあ…」と期待するのですが…。
特に、デビュー前の2歳馬にとって、競馬場の芝コースを実際に走ることは、芝の走りに慣れるという点、コースに慣れるという点、また、適性を探る上で非常に意味があります。
芝コースの2コーナー奥のポケットから2頭、2頭でスタートした馬たちは前の組に後ろの組が追いついて、直線は4頭横一線に…。脱落する馬はおらず、みな手応え良く駆け抜けていきました。
4頭中3頭は今週日曜、今年最初の「函館芝1800メートルの新馬戦」を予定しています。
直線で一番外を走ったのは外国産馬のカンジ(牡、武井、父アンクルモー)です。今年のダービーでハーツコンチェルトが3着に好走し、2歳世代はすでに2頭が新馬勝ちしている武井厩舎。現3歳にサイブレーカーという馬がいて、昨夏に福島で新馬戦2着後、2戦目の新潟で勝ち上がりを決めているのですが、この馬が同じTNレーシング所有のアンクルモー産駒。2年連続でキーンランドセプテンバーセールでアンクルモー産駒を買ってきて、芝の長めのレースから始動するところに、調教師とオーナーのこだわりを感じます。
直線で外から2番目を走っていたのがリヤンイヴェール(牝、栗田、父キズナ)です。美浦でしっかり乗り込んで函館入り。仕上がりも良さそうですし、栗田師が褒めていたのが彼女の精神面。「環境の変化にまったく動じていないし、これだけしっかり調教して、これだけしっかり食べる牝馬は見たことないです。古馬みたいですよ」と。
内から2頭目を走っていたのが、ライフセービング(牡、宮、父ビーチパトロール)。こちらは母が秋華賞2着レインダンスで厩舎ゆかりの血統です。「気性面もゲートも何も問題がない。長くいい脚が使えると思います。優等生、そうですね」と宮師も期待している様子でした。
最内を駆け抜けたのが、スパークリシャール(牡、小島、父スワーヴリチャード)です。デビューは来週、再来週かもしれませんが、こちらも動きが良くなってきています。
「函館芝1800メートルの新馬戦」では過去にイシノサンデー、メジロブライト、アドマイヤムーン、ローブデコルテ、ゴールドシップ、ソダシなどのG1馬、クラシックホースが初陣を飾っています。自分が見ていて、今朝、6時過ぎの併せ馬で最も輝いて見えたのはリヤンイヴェールでしたが、みなさんはどうでしょうか。日曜のレースが楽しみです。
今夜は帝王賞。ノットゥルノに騎乗する武豊騎手も今朝は函館で白毛馬カルパ(ソダシの半弟)の追い切りにまたがり、大井競馬場へ向かいました。自分はテレビの前になるのか、パソコンの前になるのか分かりませんが、帝王賞のレース、しっかり見たいと思います。
明日、木曜の朝も元気に取材できますように…。【木南友輔】