2024年度のJRA新規調教師試験に合格した佐藤悠太調教助手(35=寺島)が、今年いっぱいで調教師へと転身する。同助手の現在の担当馬が、ホープフルSに出走予定のホルトバージ(牡)。ホープフルSの出走馬は26日に確定するが、同馬は賞金400万円で「14分の11」の抽選対象。突破すれば、助手として担当馬でのラストランがG1となる。出走がかなえば「同じ寺島厩舎所属の今村聖奈騎手を背に大舞台へ」という万感の思いで、人馬をターフに送り出すことになる。

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感謝を胸に、助手として最後の中山ターフに立てるか-。13年に栗東トレセンに足を踏み入れて約10年。寺島厩舎では開業当初から7年以上、師の手腕を間近で見てきた。その調教助手生活最後となるのが、G1という大舞台だ。

「オーナーと先生には、本当に感謝しかないです。抽選を突破すればですが、最後にまさかG1の舞台に立てるなんて。いろいろな縁があってのことですし、競馬ってドラマがあるんだなあと思いました」。

ちょうど5年前のホープフルS。圧勝したサートゥルナーリアの担当助手だったのが、その年に調教師試験に合格したばかりの吉岡現調教師。最後の担当馬でG1を勝って、有終の美を飾った姿に感動した。

「あれはすごかったですね。自分が憧れている先生のひとりですし、勝った時に『自分も調教師試験に受かったら、あんな風になりたい』と思いました。鮮明に覚えています」。

8年前に調教師試験を受験し始めた。金沢で調教師の父・佐藤茂師の背中を見てこの世界へ。調教師試験には6回も落ち、気持ちが折れかけたこともあった。しかし、夢を諦めたことはなかった。「しんどかった時もあったけど、調教師になる未来しか見ていなかったです。他の選択肢はなかったですね」。合格発表の時に流した大粒の涙は、苦しさを乗り越えた証だった。

鞍上の今村聖奈騎手についても、特別な思い入れがある。同騎手が競馬学校1年生の頃から約5年間、そばで支えてきた。「一緒に大きい舞台に立ちたい」。そう思い、目の前の仕事を全力でやってきた。

「常に馬のことを考えていて、すごく熱量のあるジョッキーという印象。もっともっと上を目指せる騎手だと思っています。ただ、彼女をもっと支えてあげられたら…という反省点もあります。これから先、もちろん応援していますし、俺も頑張るから、聖奈にも頑張ってほしいです」。

無事に抽選を突破し、出走して、最高の結果で有終の美を飾れるか-。運命の時が迫ってきても、平常心は失わない。

「G1なんてなかなか出られる舞台じゃないけど、やることはいつも通り最高のコンディションで送り出すだけです。人馬ともまずは無事に帰ってきてほしい。そして、ファンの皆さんには、競馬っていろいろなドラマがあって、楽しみ方がある。それを見てもらいたいです」。

レース前の馬場入場。返し馬に向かう時に、佐藤助手はいつも「頼むぞ」と愛馬、そして今村騎手に声をかけている。

「いつも『頑張ってこい』の意味でそう声をかけています。けど、今回はそれに加えて、『今後も頑張れよ。今までありがとうな』の思いも乗っていると思います」。

来年から大きな1歩を踏み出す先輩から後輩へ。万感の思いを込めて「頼むぞ」と言える瞬間が、もう少しで来るかもしれない。【藤本真育】

◆佐藤悠太(さとう・ゆうた)1988年(昭63)5月3日、山形県生まれ。父であり、金沢競馬で調教師の佐藤茂師の影響を受け、調教師を志した。12年秋に競馬学校に入学し、13年秋に栗東の田中章博厩舎に攻め専助手として所属。16年に同師が逝去されたため、16年秋に開業した寺島厩舎で1頭持ち攻め専助手となった。