日本競馬界の歴史が変わった。フォーエバーヤング(牡4、矢作)が米国競馬の頂点で、世界最高峰のダートG1ブリーダーズCクラシック(ダート2000メートル=デルマー競馬場)を制した。「ウマ娘」で知られるサイバーエージェント社長の藤田晋オーナー(52)が日刊スポーツ独占で「優勝手記」を執筆。レース終了から間もない帰国便の機内で、昨年3着のリベンジ、偉業達成への興奮を熱っぽくしたためた。
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帰りのサンディエゴの空港で(興奮冷めやらぬ)どころではない状態でこの原稿を書いている。
レース前日に桑原記者から、「独占手記をお願いします。優勝した場合のみで結構です」との依頼を受けた。
実は同様の依頼は4月のドバイワールドCでもあって、その時は書く気満々だったのに、1番人気で負けてしまい、原稿は幻となってしょんぼりとドバイからの家路についた。
今回はアメリカ競馬の最高峰「BCクラシック」。勝つことを夢みていたとはいえ、さすがに甘くない。ところがである。なんと現実のものとなってしまった。これは、紛れもなく日本競馬とアメリカ競馬の歴史を塗り替える快挙である。
フォーエバーヤングとの出会いは3年前に行われたセレクトセールでの1歳セリ。偶然ではあるけれど、2021年2月24日、彼が生まれた日は、グループ会社Cygamesの大ヒットゲーム「ウマ娘」のリリース日と同日だった。リアルスティール産駒だし、芝のクラシックを目指す馬だと思って購入した。だけど彼は、それとは全く異なる道を歩むことになる。新馬戦は中央競馬ダートを快勝すると、その後は地方開催のレース、サウジ、ドバイと連勝し、米国3歳馬の頂点を決める「ケンタッキーダービー」へと駒を進めた。
そこでの鼻差、鼻差の3着が本当に惜しかった。そして悔しかった。一世一代の、またとないチャンスを逃した気がして、私はずっと後ろ髪を引かれていた。特に、接戦を演じたシエラレオーネに絶対にリベンジしたいと思っていた。
そして、ちょうど1年前のBCクラシック。1着シエラレオーネ、2着フィアースネス、強い同世代に再び敗れ、3着という結果に終わった。
彼らは年内で引退するから、同世代のライバルにリベンジするなら今年がラストチャンスだった。
まだレースが終わって2時間くらいしかたっていない。だから実感はないけど、今回、ついに彼らに逆転して勝利した、この瞬間を一生忘れることはないだろう。
私はわずか4年前にデビューした馬主に過ぎない。日本競馬の長い歴史の中で、あまたのホースマンが研さんを重ね、日本の馬を世界一に押し上げたことで、今日この結果がある。日本競馬の発展に貢献してきた皆さんに心からの賛辞を送りたい。
そして、フォーエバーヤングを生み出し、育てた牧場ノーザンファームの皆さん、このレースを勝つために、緻密に繊細に、桁外れの情熱と愛情でこの馬を極限まで仕上げた矢作先生、渋田助手、荒木助手をはじめ厩舎の皆さんにも賛辞と感謝を送りたい。もちろん、出会って3年で瞬く間に世界を股にかけるトップジョッキーに上り詰め、今回も完璧な騎乗で快挙に導いた坂井瑠星騎手にも。本当は、チームの皆さんが今回のレースにあまりに全身全霊をささげていたのが心配で、負けた場合の慰める言葉を用意していたんだけど。本当に良かった!
◆藤田晋(ふじた・すすむ)1973年(昭48)5月16日、福井・鯖江市生まれ。青学大卒。98年に24歳で株式会社サイバーエージェントを設立。00年3月、東証マザーズに当時史上最年少の26歳で上場した。AbemaTV社長。子会社のCygamesが「ウマ娘 プリティーダービー」を開発、運営する。18年にJ1・FC町田ゼルビアのオーナーに就任。同年にプロ麻雀リーグ「Mリーグ」を発足させ、現在までチェアマンを務めている。21年に馬主資格を取得。22年ニュージーランドT(ジャングロ)でJRA重賞初制覇し同通算4勝。

