今年から日刊スポーツ評論家に就任した阪神OBの岩田稔氏(38)が20日、沖縄・宜野座で行われた練習試合の阪神-中日戦を視察。対外試合デビューで1回をぴしゃりと抑えたドラフト3位ルーキー桐敷拓馬投手(21)の投球を高く評価した。

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なぜ桐敷投手の評価が上がっているのか、1イニング見ただけで理解できました。左打者の内角ギリギリに強い真っすぐを投げ込める。これは左投手として何よりのセールスポイントと言えます。

プロ初実戦の対戦相手3人はすべて左打者。中でも2番京田選手を空振り三振に仕留めるまでの流れは圧巻でした。初球に内角146キロ直球でどん詰まりのファウルを奪い、最後は外角スライダーです。内角を意識させながらボールゾーンに逃げる1球で難なく体を崩した姿に、完成度の高さを感じました。

桐敷投手は身長178センチ、体重90キロ。身長179センチで90キロ台だった自分の入団当初とよく似た体形です。斜めに大きく曲がるスライダーの角度も似ています。だからこそ、対左打者で内角直球を投げ込めるかどうかに注目していました。

スライダーを武器とする左投手にとって、左打者への内角直球は生命線といえます。強いボールで内角を突けなければ、打者を踏み込みやすくさせてしまい、外角球をさばかれる確率が一気に高まるからです。

とはいえ、左打者の体付近に直球を決められる左投手は、プロ野球全体を見渡してもそうはいません。自分の現役時代を振り返っても、どうしても死球が頭にチラついてしまうケースは多々ありました。それほど難しいハードルをあっさりクリアしているのだから、即戦力という触れ込みに疑いの余地はありません。

すべての球種でカウントを整えられる制球力、落ち着いたマウンドさばきにも安心感があります。内角直球と外角スライダーに、あとはベース板に落とせるフォークがあるだけでも、1年目から1軍で十分に通用する力の持ち主です。

シーズン開幕直後から先発ローテ、もしくは救援陣の勝ちパターンに抜てきされてもおかしくないほどの魅力を感じました。(日刊スポーツ評論家)

▽中日金子スコアラー 毎回いい。新人は初めての実戦、対外試合で思うことがあると思うけど、そういうのを全く感じさせない。(京田を三振させたスライダーは)曲がりが大きかったですね。

▽巨人志田スコアラー 落ち着いて投げられているし、良いピッチングをしてる。(先発、中継ぎ)どこでも使えそうな雰囲気がある。

▽DeNA新沼スコアラー 左の内角に投げられるのはすごい。何でもストライクを取れそう。すごく落ち着いていて、大人びた雰囲気がある。

▽広島岩本スコアラー 球自体の強さもありますし、変化球でストライクが取れる。なかなか崩すのが難しいかなと思わせる良いピッチング。このままいくと間違いなく(開幕1軍に)残る。注意していかないといけないピッチャーですね。

▽ヤクルト石堂スコアラー 落ち着いてどんな球種でもカウントを取れるし、勝負もできるので、ある程度計算はできるんじゃないか。(スライダーは)バッターもてこずっていた。良い感じの変化だし、右も左も厄介になってくると思う。

阪神対中日練習試合 3回表中日2死、山下の内角低めを攻める桐敷(撮影・上田博志)
阪神対中日練習試合 3回表中日2死、山下の内角低めを攻める桐敷(撮影・上田博志)