北海の背番号8、山本樹投手(3年)が自信を持つチェンジアップで甲子園をたぐりよせた。北照戦の9回2死走者なし。最後の1球もタイミングを外し、相手打者のバットが空を切った。渡辺翔捕手がガッツポーズする姿が目に飛び込んだ。「勝ったんだ」。両手を広げてゆっくりとホームへ歩いた。じわじわと喜びが広がった。

 「うれしい。楽しんで投げることができました。バックに助けられ、感謝しています。チェンジアップが良かった」。3安打完封、三塁を踏ませない投球に声を弾ませた。

 背番号1の渡辺幹と投手陣の軸。平川監督は「少し変えてみました」と、南大会初戦の先発に山本を起用した。北海道栄戦で5回0封と期待に応えた。延長13回を戦った駒大苫小牧戦は2番手で9回無失点と好投。さらに決勝打を放った。準決勝の小樽潮陵戦は、初回のピンチに救援登板。打者1人を確実に仕留め、流れを渡さなかった。南大会4試合計23回1/3を無失点。計295球で4年ぶりの優勝に大きく貢献した。

 昨夏以降、チェンジアップの握り方を工夫して開花した。「中指と薬指を使って投げたら面白いように決まりました」。練習で打撃投手を務めながら磨きをかけた。大阪・堺市出身。中学時代に所属した忠岡ボーイズで広島前田健太の後輩だ。11年に春夏甲子園出場を果たした北海にあこがれ、北の名門にやってきた。

 入学当初は、野球部恒例の学校グラウンド2周半で、ランニングのスピードについていくのがやっとだった。「恐ろしいところにきた」と驚いた山本は今、古豪の先頭に立ってグイグイ引っ張っている。【中尾猛】