特Aランクの1発で開幕OKだ。巨人阿部慎之助内野手(36)が「4番一塁」での1号本塁打を放った。日本ハム戦の4回、追い込まれてからのフォークボールに鋭く反応。本番さながらの読みと強振で、左中間席の最深部に放り込んだ。4番が放った今季のチーム東京ドーム1号。仲間たちは「時短タッチ」で迎えた。ベストの状態で一塁転向のシーズンに臨む。
東京ドームの巨人好きがこよなく愛する放物線だった。阿部は4回の第2打席、日本ハム矢貫に追い込まれていた。「変化球を頭に入れながら」、外角に沈むフォークボールに反応した。右足の踏み込み。インパクト。左足の蹴り。あらゆる動作に強さがみなぎった。やや低めをかち上げたボールはスピンが利き、揚力を受けた。滞空時間たっぷりの1号に「うまく打てた。逆方向は僕のバロメーター。自信になる」と、珍しく言葉が弾んだ。
景気のいい言葉が出て当たり前だった。技術と読みが重なった。カウント1-2の4球目。仕留めに来たフォークを、仕留めた事実に価値があった。「試合勘がつかめてきた。勝負に対する読みが、できてきた」と感じた。心技体がそろった4番らしい1発。これで巨人は開幕できる。
記念すべき「4番一塁」の1号は、実は「東京ドーム時短1号」でもあった。巨人の太陽が放った極上の1発。昨年までなら全員がベンチから飛び出し、ハイタッチで迎えるのが当然だった。軽いグータッチの原監督、川相ヘッド、村田総合コーチ…、ここから先は誰もいなかった。阿部は本塁を踏んでからたった10秒でベンチに帰還し、ベンチ内でもみくちゃにされた。
チームを挙げて試合時間の短縮に取り組む。球団が「一番面白い8回あたりに3時間が経過して、ナイターでは少年少女のファンが帰ってしまう。申し訳ない」と発起。熊崎コミッショナーの提唱する時間短縮に同調した。球団と選手会は「できる限りのことを」と話し合い、出迎えを簡素化する案をオープン戦で試すことにした。
肝心の1発がなかなか出ずに苦労したが、阿部が放った熱気そのままにゲームは続行した。巨人のアイデアに乗る形で、他球団も「時短タッチ」を採用するケースが増えている。本番でも継続し、球界全体に広がる可能性は十分にある。
プロはプレーで魅了する。阿部は「今、取り組んでいることを信じて、やっていく」と言った。一塁転向。バットマン・阿部慎之助のすごみを見せつけるシーズンにする。【宮下敬至】
◆試合時間短縮メモ 熊崎コミッショナーが「3時間以内に収めていきたい」と試合時間短縮に取り組む姿勢を見せ、キャンプ視察では監督、コーチらと意見を交換。試合時間の短縮などを話し合うゲームオペレーション委員会が設置され、セ・パ各球団の代表者に加え、コミッショナーの呼び掛けで日本プロ野球選手会、日本野球機構(NPB)審判部も出席し2月26日に初会合が開かれた。



