ソフトバンク武田翔太投手(25)が、オリックス相手に1安打完封で今季初勝利を挙げた。この日は工藤監督の55歳の誕生日。中継ぎ陣が苦しい中、今季チーム初の完投勝利で祝った。

 お立ち台で武田が熱唱した。「♪ハッピバースデー ディア 監督~」。美声を高々とヤフオクドームに響かせた。ベンチ裏のテレビで見ていた工藤監督は照れながらも「歌が最高だった」と喜び、手にはウイニングボールを握っていた。

 アクシデントにも負けなかった。8回、マレーロへの投球中に親指をひっかき、爪の先がパチンと音を立ててはがれた。「いい感じで投げていたのでそのまま投げた。気合が入っていた」と続投。9回にもこの日最速151キロを計測。最後の121球目は外角にスライダーをきっちり決めロメロを二ゴロに仕留めた。

 今季、これまで4試合は7回まで持たず0勝2敗。すべての試合で被弾していた。「今日がラストチャンスというくらいの気持ちで全力でいった」。快投へのヒントは3日、千葉でのブルペン投球だった。球種に関係なく、リリース時の手首の抜き方を修正。「手首を内側から外側にするのではなく、外側から内側に」と意識を変えた。シュートを投げるようなイメージとは逆で、引っかけるように投げればボールは低めにいく。高く浮いた失投は減り、体の開きも修正できた。

 工藤監督は就任した15年以来、誕生日は負けなしの4連勝。負けるわけにはいかなかった。4月の苦しみを抜けた武田も、たくましく生まれ変わった。【石橋隆雄】