安芸から逆襲だ!! 阪神10年目の中谷将大外野手(27)が10日、2軍安芸キャンプの声出しで“男の誓い“を立てた。午前9時過ぎ。朝の静寂を破る決意だった。ナインの輪に進み出て声を張った。

「今年の目標は、ここにはいませんが、15本、ホームランを打ったら(田中)秀太さんが坊主にするという約束をしたので、15本以上打って、秀太さんを坊主にさせたいと思います。そのためには多すぎる振り込み量に負けないくらい、振り込みたいと思います」

胸中に悔しさが渦巻く。昨季は62試合出場で打率1割8分1厘、6本塁打。17年に自己最多の20発を放った男が、7年ぶりキャンプ2軍発進の屈辱を味わった。それでもグッとこらえて前を向く。「目標設定ですから。最低でも15本以上、打ちます、ということです」。入団時の担当だった田中秀太スカウト(42)は沖縄・宜野座で伝え聞くと、笑顔で言った。「キャンプ前にそんな話をした。打てないやろ~」と期待を込めて愛の挑発。いまは黙ってバットを振るだけだ。

ボロボロの手のひらが熱意を物語る。左手はマメが破れ、血がにじむ。この日は午後からノンストップでバットを振り続けた。全体の打撃練習を終えると、そのまま特打へ。途中から馬力アップで柵越えを量産。184スイング目だ。低いライナーは矢のようにバックスクリーンへ。「バンッ!」。衝撃音が響くと、小さくガッツポーズ。見守るファンの拍手も起きた。「あれはよかったですね!」。手応えの一撃だった。

特打は柵越え18発。さらに痛烈な打球で何度もヒットコースへ。通常の打撃だけで574スイング。ティー打撃などを合わせれば、700回以上、振り込む猛練習ぶりだ。「日々考え中です。いろいろ試している。いま、いい感じ。続けてやるだけ。充実しています」。今季初実戦の今日11日JR四国戦は4番を任される。「結果にこだわって、やりたい」。外野は近本、福留、糸井、高山やサンズも競う激戦区。競争に割って入り、必ずや秀太スカウトの鼻を明かす。1軍宜野座組に負けない気概が、中谷にある。【酒井俊作】

○…阪神2軍スタッフも中谷の意地に期待している。打撃ケージ裏で特打を見守った和田テクニカルアドバイザーは「工夫している。思いがスイングに出ている。それがどこまで続くか。キャンプは特別な思いもあると思う。熱が入っている。課題もしっかり持って自分でやっている」と目を細める。11日のJR四国戦は4番で起用。北川2軍打撃コーチは「当然でしょう」と言った。キャンプは早朝から居残りの特打の常連組。実戦での結果を待ちわびる。

◆中谷の低迷 7年目の17年に急成長を遂げ、チーム最多の20本塁打を放った。生え抜きの右打者では06年浜中治以来で一層の進化が期待された。だが18年は確実性に欠ける打撃に終始して5本塁打。19年は狙い球を絞り切れないケースが目立ち、6本塁打に終わった。出場62試合、21安打はいずれも16年の1軍定着後最少で2年連続の不調。この間、外野のライバル近本が登場するなど居場所を失い、今キャンプは7年ぶり2軍発進。福留や糸井、調子を上げている高山、新外国人サンズがひしめく1軍外野争いは激烈で、まずは2軍での結果が求められる。