日刊スポーツ評論家陣がリレー形式で阪神に提言する「V奪回へのシナリオ」の第8回は、西鉄黄金時代のスラッガーで阪神でも監督を務めた中西太氏(87)です。矢野監督への要望や大山への注文、課題の守備力向上、ドラフト1位近大・佐藤輝明内野手(21)への期待など、多角的に提言しました。

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シーズン終盤の矢野監督はなんだかベンチでしょんぼりしているように映ったね。腹はそうではないのかもしれないが、気がやさしいのかな。来シーズンはどっしりと構えてやってくれるんじゃないかな。

阪神には楽しみな選手がたくさんいるよ。そこは起用を含めての見極めが大事になってくる。近本だってよく巻き返した。周東が機能したソフトバンクのように、近本が1、2番にはまれば得点につながるからね。

大山は自信をつけただろう。最後は大振りが目立ったが、あの積極さがあって広角に打てるようになったら頼もしいね。大山が「5番」「6番」で起用できるようになれば、強いチームになるよ。

みなさんが指摘するように、守備は中途半端だった。わたしがいうのはエラーの数ではない。内容だ。グラブさばき、フットワークといった基本ができてないんだろうな。身近にいるんだから吉田(義男)君に極意を聞いたらどうなんだ。

それはまた、外野の守備にもいえることだ。外国人のサンズのファインプレーが目立つようでは寂しいよな。糸井、近本らのレギュラー組にもチャージしてからのカットプレーに課題が残ったね。

ドラフト1位佐藤輝明の加入が刺激剤となって、チームに与える影響は大きいよ。大学生であのしっかりした体つきで左バッターでしょ。長打もあるみたいだから、内、外野どちらでもいいよ。

大切なのはちゃんと方向性を示し、ちゃんと教えて、ちゃんと伸ばしてあげることだ。慣れるまでには少し時間はかかる。ベテランとの兼ね合いもある。まだ外国人に頼らざるを得ないところもある。でもわたしだったら1年目から使うだろうね。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

 

第1回 阪神と巨人の差は守備と走塁の状況判断/梨田昌孝氏

第2回 菊池涼介も過去は…矢野阪神よ守備も経験/緒方孝市

第3回 矢野阪神がV争いするには「一貫性」ほしい/権藤博

第4回 阪神の複数ポジションでの競争に異議あり/真弓明信

第5回 阪神V奪回へ藤浪…など投手部門は3条件/中西清起

第6回 阪神ミス撲滅へ頭と体の準備足りない/桧山進次郎

第7回 「ボールの待ち方」阪神攻撃面の課題/大石大二郎