ロッテの来季の契約更改が8日、始まった。ワインレッドのネクタイを締めた江村直也捕手(29)は、会見場に入るなり「寒い中、皆さんお疲れさまです」とさすがの心配りだ。

「ありますか、質問?」

「あります」

「本当っすか?」

ちょっとした掛け合いが続く。プロ11年目の今季は19試合に出場し、スタメンマスクはそのうち3試合。6月中旬に出場選手登録を抹消され、2軍のイースタン・リーグでもラスト2試合まで出場がなかった。

コロナ禍で2軍の情報入手がなかなか難しい。腰のコンディションが、といううわさは耳にしていた。

「腰…そうですね。本当にずっと、そこに苦しめられたっていうか。だからトレーニングの方法も変えましたし、準備の仕方も。今のところそれが順調に行っているのかなと」

秋のフェニックス・リーグでは打席に立てるまで回復し「今は、全く気にならない状態です」と笑顔を見せる。石川と自主トレをしながら、打撃練習にも力を入れている。

大阪桐蔭から入団し、来季で12年目。ロッテでは今や角中、唐川、荻野、西野に次いで在籍年数が長い生え抜き選手になった。存在感は小さくない。

5月下旬、スタメンに抜てきされながらも守備のミスが続いた佐藤都志也捕手(23)が明かした。

「江村さんに、終わったことは仕方ない。“次、勝てるにはどうしたらいいかを考えろ”と言われました。すごく救われました」

半年以上が過ぎて「ありましたね」と懐かしんだ。「あんまり落ち込むような子じゃないのに、珍しくすごく落ち込んでたので、大丈夫かなと思って気に掛けて。たまたまロッカーで2人だったので」。

捕手の仕事は多岐にわたる。そう簡単に切り替えられるポジションではないのは分かっている。それでも。

「僕もけっこう切り替えられないほうだと思うんですけど、いろいろピッチャーの方が声かけてくれたり、そのひと言ですごく助かりますし。ほんと、何げないひと言かもしれないですけど、それが、ねぇ、すごく心に響いたりとか。僕もピッチャーの人に声掛けられて救われたこと、いっぱいあったんで」

当たり前のように、惜しまず還元していく。たった1つのポジションを巡って競争が激しくなろうとも。「負けないように。ドラ1の子も入ってくるので、ちょっと、頑張りたいと思います。守備の方っすよね、僕の生きる道なんで」と少し照れながら誓った奮闘。「来年も契約更改の会見できるように、頑張ります」。そう言って会見場を後にした背中が、なんか格好良かった。【金子真仁】