岡田阪神が球団9年ぶりの日本シリーズ進出を決めた。レギュラーシーズンを独走優勝し、CSファイナルステージを無敗突破した虎に果たして死角はあるのか? 前回14年にソフトバンクとの日本シリーズで好投した日刊スポーツ評論家の岩田稔氏(39)が21日、9年前の経験を踏まえて注意ポイントを明かした。【聞き手=佐井陽介】

 

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9年前の日本シリーズで先発した時、変なアドレナリンがブワッと出たことに驚かされました。特に自分は1勝2敗の第4戦で投げたこともあり、「これが今年1年頑張ってきた中で最後の登板だ」という意識がどうしても生まれてしまいます。自分の場合はプラスに働きましたが、若い投手が多い今のチームでそんな感情がどう作用するか。特別なアドレナリンが空回りにつながらないように注意が必要です。

14年の阪神はレギュラーシーズン2位からCSファーストステージ、ファイナルステージを勝ち上がっての日本シリーズ進出。いわゆる下克上で勢いがあり、失うモノもありませんでした。自分自身、おこぼれをもらったというか、「優勝していないのに日本シリーズで投げられてラッキー」ぐらいの気持ちでマウンドに立てたのが良かったのかもしれません。1回裏にいきなり左翼へのポテンヒットが二塁打になり、自分の犠打野選と四球から2点を先制された後も、意外と落ち着いて7回2失点にまとめられた記憶があります。

ただ、9年前と今回とではプレッシャーがまったく違います。今年は18年ぶりのリーグ優勝を飾り、セ王者として日本一への期待値も比べものにならないぐらい高い。重圧を感じるな、というのは酷な話です。9年前の日本シリーズの先発投手はメッセンジャー、能見さん、(藤浪)晋太郎と自分。特にメッセと能見さんには豊富な経験がありました。ただ、今年は先発が予想される村上投手、伊藤将司投手、大竹投手、才木投手、西勇輝投手の中で、経験値が高いのは西投手ぐらい。気持ちが空回りしないように、6回2失点ぐらいでチームが勝てる条件を整えられたらOK、ぐらいの気持ちでマウンドに上がった方が得策ではないでしょうか。

CSファイナルステージでは村上投手、伊藤投手、大竹投手はいずれも100パーセントの出来ではなかったように感じました。さすがに気負いもあったのかもしれません。とはいえ、短期決戦で個人の完璧を求める必要はありません。とにかくチームが勝てばいいのですから、まずは日本シリーズでの投球、プレーを楽しむ感情を忘れないでほしいものです。(日刊スポーツ評論家)

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