何をもって「死」とみなすか? 日本では「心臓死」だが、世界を見渡すと「脳死」が多いという。愛する人に予期せぬ不測の事態が訪れたとき、私たちはどう対応するのか。正解はないだけに、作品を見終えた後は心と頭が騒がしい。

篠原涼子演じる主人公は2児の母。夫(西島秀俊)はIT機器メーカーの経営者だが、長女の小学校受験が終わったら離婚予定という“仮面夫婦”だ。そんな一家を悲劇が襲う。長女がプールで溺れ意識不明の重体となり、意識の回復が見込めない状態に陥る。

愛する娘にどんな決断を下すのか。動いている心臓を止めて臓器提供することもできるし、0%に近い可能性を信じてこのまま生かすこともできる。究極の選択を迫られ、わらにもすがる思いになると、人はこうもおかしくなってしまうのかと切なくなる。

東野圭吾らしい鉛のようなヒューマンミステリー。スーパーヒーローが現れるわけでも、絶対的な解決策が提示されるわけでもない。終盤、弟の誕生日会での背筋が凍る一幕は、救いのない目を覆いたくなる場面の連続だ。この手の作品を見るたび、ただただ医療の発展を願うばかりである。【杉山理紗】

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