東映やくざ映画で活躍し、「十津川警部」シリーズなどテレビドラマで広く親しまれた俳優渡瀬恒彦(わたせ・つねひこ)さんが14日午後11時18分、多臓器不全のため東京都内の病院で死去した。72歳。16日、所属事務所が発表した。

 渡瀬さんは、11年12月放送のTBSドラマ「帰郷」で、渡と40年ぶり2度目の共演を果たした。提案したのは、渡瀬さんだった。「兄貴、やってみないか」と自ら出演依頼した役どころは確執のある兄弟役。渡も「恒彦さえ良ければやりたい」と思いに応えた。

 兄弟共演の構想は、プロデューサーとの間で00年前後から構想していたという。半ば企画のような立ち位置だった渡瀬さんだが、11年11月に撮影現場で取材に応じた際、兄弟共演については多くを語らなかった。「40年ぶりの共演。互いをどう見ていたか?」と聞くと「兄貴程度の芝居しかできなかったら、とっくに消えていたと思います」とジョークを飛ばした。

 その裏では「兄貴との共演は大事なものなので、とっておきたい」という思いを長年、口にしていたという。そのことをぶつけると「我々の持っている時間が、そろそろないもんですからオファーがあるうちにやっておかないと」と答えた。

 また兄弟共演を持ち掛ける踏ん切りがついたのは、同年5月に渡が石原プロ社長を退任し一役者に戻ったことだったとも明かした。「楽に仕事が出来るようになったのも一因」。現場で多く語らせることを含め、とにかく渡を思い、立てた。

 そんな兄弟も、若い頃は剛腕でならした武勇伝がある。渡は青学大空手部出身で、渡瀬さんも早大で空手部に籍を置いた。2人を知る関係者は「渡さんは空手を鍛え抜いた強さだけれど、渡瀬さんは、とにかくケンカが強かった。不良5、6人に囲まれて、全員たたきのめしたこともある。強さのタイプは違うけれど、芸能界最強は、この兄弟だという話もささやかれた」と振り返った。【村上幸将】