パントマイムとダンスによる独創的な振り付けが多くのファンを引きつける。振付師パーツイシバ(51)。「サントリー伊右衛門」や「ポケモンGO」などCMの振り付けで業界では知る人ぞ知る存在だが、50歳を機に、表舞台を目指し活動を続けている。

昨年9月に「半世紀公演」を3日間開催した。数百人が入る劇場は連日満員になり、「思った以上に反応がよくて。見たいと思ってくれる人がいるならもっと頑張ってみよう」と決意。芸能事務所にも所属し、芸能活動に本腰を入れる。

北海道伊達市の生まれ。12歳でマイケル・ジャクソンのパフォーマンスに衝撃を受け、高校卒業と同時に上京。上野公園で大道芸人を始めた。「あてもなく始めましたがストリートパフォーマンスでいけて。貧乏でしたが、ずっと食べていくことができました」。

転機は40歳の時にも。フジテレビ系「ほこ×たて」に出演。スタチューという銅像のように動かない大道芸で、どんな人間にも感知する防犯センサーと対決したほか、5番勝負を行った。知名度が全国区となり「商業施設に呼ばれるようにもなりました」。

門下生で結成されたマイムユニット「エコール・ド・トーキョー」も立ち上げ、舞台公演を続ける。来月23日には東京・新宿のハイジアV-1で単独公演「ナル」を開催。作、演出、主演を務めるパーツは「1本の物語になっていますが、マイムなのでせりふはありません。いわばせりふのない映画ですかね。観客は見続けていないと分からなくなるので、そこをどう見せるか、挑戦ですね」。

せりふのないマイムには、言葉の壁という弱点がない。「舞台には美術もありませんし、からだ1つだけ。海外にも出ていきたいですね」。世界も視野に入れている。【竹村章】

◆パーツイシバ 1969年(昭44)9月12日、北海道伊達市生まれ。高校卒業と同時に上京し、大道芸人としてスタート。09年には東京都生活文化局のヘブンアーティストを取得。CMの振付師として「キリン午後の紅茶」「フジゼロックス」など多数。郷ひろみのコンサートの空間演出を手掛けるほか、NHK・Eテレ「天才てれびくん」などの公開放送も担当。芸名の由来は身体のどこでも「パーツ」のように動かせることから。