J3ブラウブリッツ秋田が、入場者数を水増しした。Jリーグは、14年開幕戦から19年開幕戦までホーム試合の入場者数を実際より増やして公式発表した秋田に対し、400万円の罰金を科した。クラブに制裁を下し、統括団体Jリーグ自らは何の処分もなし。発覚するまで、Jリーグは見過ごしていた。

一昨年はJFL奈良クラブが観客数を水増しして、JリーグはJ入り資格となる百年構想クラブから同クラブを外した。担当者が1回、チェアマンが1回ヒアリングをし、J入り資格を認めたにもかかわらず、あっさりと無効にした。すべての責任はJFL事務局と当クラブに押しつけ、2度もヒアリングしたJリーグは、何の責任も取らなかった。そして今年1月、何事もなかったように、再び奈良クラブへ同ライセンスを交付している。

Jリーグは、地域に根ざしたサッカークラブを作るとの理想がある。しかし日本には、サッカーではなく、野球、相撲が好きな人もいる。各地域に行政と連携してスタジアムを作るように指導しているが、ようするに、国民の税金を使ってスタジアムを確保しろと、言ってるようなもの。その施策に関して、サッカーに興味がない半分以上の県民、市民が納得するのだろうか。

クラブ数が増えれば当然、試合数が増える。するとDAZNからの金額も徐々に増える。だから今のJリーグは、クラブが間違いを起こしてもクラブはつぶさない。自分たちの収入にかかわってくるからだ。ルールを決めたのなら、厳しく裁いた方がいいし、そのルールが現実的でないなら緩めればいい。理想ばかり求めるJリーグに、苦しむのはクラブ。地方クラブに鹿島の成功例を挙げながら「がんばれ」と言っても、どの地域も鹿島のようにはいかないと、Jリーグ自体が最も知ってるはずだ。

そうであれば、J2、J3のクラブライセンスの基準を下げることも考えないといけない。特に地方クラブは、身を削りながら生存している。今回の秋田は、告発者がいたから明るみに出たが、ひょっとすると、他にも似たような境遇のクラブは複数存在しているかもしれない。Jリーグは、現状に目をつぶってはいけないよ。(日刊スポーツ評論家)

セルジオ越後氏
セルジオ越後氏