世界的なプレーヤーを見ようと駆けつけたサポーターが多くいたのか、12日のJリーグヴィッセル神戸-鹿島アントラーズが行われたノエビアスタジアムの観客席は約2万人で埋まっていた。私(記者)は仕事ではあるが、ビッグ3を見られるうれしさで舞い上がっていた。

この日は神戸が鹿島を迎えてのホーム戦だ。ここまでリーグ戦5連敗中の神戸。1席30万のVIPチケットが、この日初めて購入者ゼロとなった。しかし、このサポーターの多さは、ビッグ3(VIPトリオ=ビジャ、イニエスタ、ポドルスキ)の期待値と比例しているだろう(=この日はポドルスキがベンチ外)。

そんな試合で、気になる選手がいた。神戸のMF郷家友太(19)だ。

郷家は高卒2年目で、U-20ワールドカップ(W杯)日本代表に選出された将来が楽しみな選手。相手DFを背にしても倒れない体幹の強さ、正確なパス。どれをとっても19歳とは思えないプレーで目がくぎ付けになった。

試合は鹿島に敗れ、神戸の6連敗となったが、試合後のコメントがまた印象に残った。

「先に点を取られると相手の勢いにのまれやすいのが今のチーム。1人1人がやる気、気迫を持ってやらないと相手の思うツボ」

硬い表情ながら、きっぱりと言い切り、チームのことを全力で考えていた。19歳ながらチームを引っ張る1人。さとり世代と呼ばれるこの世代は、もっと淡泊に物事を考えるのかと思っていたが、郷家からは「俺がチームを勝たせる」という熱い思いが感じられた。

郷家は「チーム(神戸)を勝たせずに(U-20W杯に)行くのは申し訳ない」と責任を感じていたが、気持ちを切り替えて「日本のために自分たちのサッカーができるように頑張っていきたい」と語った。

神戸の30万VIPチケット。20年東京オリンピック(五輪)開会式の最高額のチケットと同じ値段だ。23日にポーランドで開幕するU-20W杯で活躍して、神戸のVIPチケット購入で「アクセスがしにくい状況が続いております」という文言が出ることを期待している。そして、私はそこにまた取材に行きたい。【南谷竜則】

神戸対鹿島 鹿島に敗れ、肩を落とし整列する神戸イレブン(撮影・前田充)
神戸対鹿島 鹿島に敗れ、肩を落とし整列する神戸イレブン(撮影・前田充)