第2のケーヒル? に要注意。ワールドカップ(W杯)アジア最終予選でサウジアラビアに敵地で敗れ2敗目を喫した日本代表は、12日に3連勝のオーストラリア戦(埼玉)を迎える。スタメンが予想されるFWアワー・メイビル(26)は、南スーダン難民。同予選の初戦・中国戦では、格闘家ばりのハイキックで先制点をマーク。7日のオマーン戦でも均衡を破る強烈な左足シュートを放ち勝利に貢献した。身体能力の高さは、元オーストラリア代表FWケーヒル(41)をほうふつとさせる。アフリカにルーツを持つ力は、計り知れなく、侮れない。

キックボクシング那須川天心であれば、ハイキックで敵の頭を粉砕することは、いとも簡単だろう。無敗の「神童」。リング上でお見舞いする一撃は、それは、それは美しいもの。芸術性を帯びながら、危険極まりない。オーストラリア代表FWメイビルの右足も、ピッチ上では相手を戦慄(せんりつ)させる。

アジア最終予選の初戦・中国戦。0-0の前半24分だった。ペナルティーエリア内の右からの折り返しに、猛烈なスピードで入った。クロスはGKが触れ、軌道が変わった。そこへの反応も速い。倒れ込みながらヘディングを試みた中国DFブラウニング。メイビルのハイキックは、その頭をはるかに超えた。ブラウニングは身長180センチ。推定160センチに到達した、メイビルのかかと落としのようなキック。脳天は直撃しなくとも、ゴールネットを揺らした。試合を解説した元日本代表FW佐藤寿人氏(39)も「身体能力の高さを感じますし、足元もうまい」とうなずいた。

オーストラリアのFWといえば、ケーヒルの名を頭に描く人も多いことだろう。日本戦に通算10戦5得点。「日本キラー」「天敵」と恐れられた男は、強靱(きょうじん)なフィジカルを武器に対人で圧倒。高い打点のヘディングで、強烈なミドルシュートで、予測がつかない動きで、得点を決めてきた。そんな“初代”をほうふつとさせる、メイビルのスピード、タフネスさ、アクロバティックな先制点だった。

ルーツはアフリカ。ケニアの難民キャンプで生まれ育った。浦和に所属するDFトーマス・デン(24)は幼なじみ。2人は南スーダン難民として、オーストラリアに渡り、ともに同国で代表デビューした。メイビルはこの中国戦でチーム最多の5本のシュートを放ち、いずれも枠を捉えた。第2戦(対ベトナム)は目立った活躍はなかったが、能力は未知数。主に左ウイングを主戦場とし、利き足の右だけではなく左のミドルも強烈。アフリカ出身者ならではのバネもあり、空中戦にも強い。

現在はデンマーク1部ミッティランで主力として活躍する。昨季は欧州チャンピオンズリーグに予選、本戦で10試合に先発。2得点を決めるなど、大舞台にも強い。21歳で代表に初招集。くしくも、その試合は17年8月31日の日本戦(埼玉)。出場機会はなかったが、当時の監督で、現セルティックの指揮官であるポステコグルー氏(56)から、圧倒的なスピードを評価されていた。

オフには、難民キャンプを訪れ、恵まれない子どもたちへサッカーシューズなどを贈るなど、心優しき青年。笑顔がすてきな男は、ケーヒルのような「天敵」となるのか、否か。日本が誇るDF陣とのマッチアップは見もの。キャプテン吉田を筆頭に、アーセナルで羽ばたく冨安らとの「ファイト」は注目だ。【栗田尚樹】

◆アワー・メイビル 1995年9月15日、ケニア難民キャンプで生まれ育つ。浦和DFトーマス・デンは幼なじみ。2人は南スーダン難民として、オーストラリアへ移り、ともに代表デビューを飾った。18年10月15日の親善試合クウェート戦で国際Aマッチ初出場初ゴール。現在はデンマーク1部ミッティランに所属。179センチ、65キロ。右利き。

◆オーストラリア 現役時代に広島でプレーし、仙台を指揮したこともあるアーノルド監督が率いる。東京五輪代表監督を兼任しながら2次予選を8戦全勝で突破。最終予選も開幕2試合連続完封勝利で、W杯アジア予選では史上初の開幕10連勝を達成した。C大阪のFWアダム・タガート、J2岡山のFWミッチェル・デュークがそれぞれ6試合3得点を記録している。