日本高校サッカー選抜の青森山田FWバスケス・バイロン(3年)が、後半ロスタイム弾を決めた。

左足で押し込み、U-18Jリーグ選抜相手に1-1で引き分けた。1月の全国選手権優勝に貢献し、東北社会人1部いわきFC(福島)に入団した未来のチリ代表候補は、ドリブル突破やシュート力で存在感。同チームで4月に予定されている欧州遠征のデュッセルドルフ国際ユース大会(ドイツ)では世界に実力をアピールする。

バイロンが申し訳なさそうに笑った。「触ってしまった罪悪感もあるんです…。でも自分の得点という結果なので、うれしいです」。1点を追う試合終了間際。FW西川潤(桐光学園2年)の左足シュートが相手DFに当たってコースが変わり、ゴールラインを越える間際だった。GKの後ろから快足を飛ばし、左足でワンタッチ。「決められたのは自分の力ではなく、チームのおかげです」。優勝した選手権の準決勝、決勝では同会場で得点を奪えなかっただけに、違う喜びもかみしめた。

攻撃的な幅も披露した。チーム事情から本来の右サイドだけでなく、左サイドや1トップも務めた。シュートは両チーム最多の7本。ドリブルでファウルを奪い、直接FKを何度も得た。「前の3人で相手を見て、入れ替えながらやりました。得点の場面の前は、やっぱり右シャドーでチャンスメークできるなと思ってチェンジしました」。判断力、順応性が導いた価値ある1発だった。

新天地いわきFCのハワイ遠征から13日夜に合流したばかり。「時差ボケが半端なかった」中でも、約20時間眠らずに解消した。ハワイでも突破力をアピール。パシフィックリム杯3位決定戦バンクーバー(米メジャーリーグサッカー)戦では、自身が奪ったPKを真ん中に決めて“プロ初ゴール”。米国代表もプレーする強豪に「攻撃は通用していた。体がデカくなってスピードも増していけば、欧州などの海外でも渡りあえるかな。これからやることが明確になった」と自信を得た。

海外クラブ移籍や、チリ代表入りも目標に掲げる。「いわきFCの先輩たちは、胸筋が自分の倍くらいある。J1に行くより、正解だったと思っています」。唾液を採取して遺伝子分析で筋力トレーニング法を選択したり、徹底的な栄養管理などの好環境も成長への味方につける。スペイン語と日本語は完璧だが「英会話も習います」と向上心も抜群。まずは日本高校選抜のエースとなり、世界で羽ばたく。【鎌田直秀】