突然の監督交代に揺れるヴィッセル神戸が「イニエスタ頼み」を露呈し、3連敗を喫した。フアンマヌエル・リージョ前監督(53)の辞任を受け、再登板した吉田孝行監督(42)の初陣となる敵地浦和レッズ戦は0-1で敗れた。

開幕7戦フル出場だったMFアンドレス・イニエスタ(34)が下半身の軽い違和感で今季初めて欠場。指令塔を欠いた攻撃は単調を極め、開幕戦以来の完封負けを喫した。

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数字上は神戸の圧勝だった。シュート数は浦和の5本に対し12本。ボール保持率は75%を記録した。しかし、スコアは0-1。現実には、前半10分に先制点を挙げた浦和に楽々と守り抜かれた。

スペイン人のリージョ前監督は前節まで3勝1分け3敗と出遅れたことで電撃辞任となった。だが監督交代よりも、イニエスタ不在の影響が神戸にとって明らかに大きかった。

先制後は完全に引いて守る浦和に対し、自由にボールを保持する。そこからの攻撃が単調を極めた。1トップで張るFWウェリントンにボールを放り込むだけ。吉田監督は「リージョ体制でやってきたベースは変えていない。悪いサッカーをしたわけではない」。FWビジャも右足の違和感で2戦連続で欠場し、VIPトリオはポドルスキだけの出場となった。

イニエスタは下半身の軽い違和感とみられ、吉田監督は「大きな問題ではない」と説明。次節28日川崎フロンターレ戦への見通しは立つ。ただ、攻撃にあらゆる変化をつけ、決定的チャンスを生み出す大きな存在。目指す「バルセロナ化」もイニエスタ頼みが浮き彫りとなった。

チーム内の動揺も収まっていない。SNSで主将辞任を表明したポドルスキに代わり、MF山口がキャプテンマークを巻いた。ポドルスキは語った。

「(選手からの)十分な信頼を得られないとチームはよくならない。監督が交代するタイミングだけでなく、この数週間チームは不安定だった。そういう状況から脱却しなければいけなかったから(吉田)監督と話してキャプテンマークを返した」

カンフル剤的な役割を請け負ったが、即効性はなかった。このまま迷走を続けるのか。豪華メンバーを抱えても、神戸は早々と正念場を迎えた。【実藤健一】

◆神戸の監督交代経緯

14日 広島戦で8分間で3失点の逆転負け。試合後のミーティングで昨秋に就任したばかりのリージョ監督は辞意を伝える。

15日 後任の要請を受けた吉田監督が受諾。

17日 リージョ監督の辞任、後任に吉田監督の就任を発表。同日、ポドルスキが自身の公式ツイッターで主将辞任を表明。

19日 ポドルスキがツイッターを更新。「私はあなたからたくさんのことを学んだ。一緒に仕事ができてよかった」と前監督を惜別。新監督はポドルスキの主将辞任の意向に関し「コメントは差し控える」。