J1リーグが約4カ月ぶリに再開し、浦和レッズはリモートマッチ(無観客試合)で無人となったスタンドをド派手に装飾した。

約6日間かけて約5万人収容の観客席に赤、白と黒のビニール製シート6万枚でJリーグのシャーレとサポーターへのメッセージをつくりあげた。バックスタンドにはサポーターが購入した5000本以上のタオルマフラーなども設置。埼玉スタジアムを鮮やかにクラブカラーで埋めた演出に、GK西川周作主将(34)は涙を流して感謝した。

   ◇   ◇   ◇

リモートマッチでも、埼玉スタジアムは赤く染まった。約5万人が収容可能なスタンドには、いつものサポーターの姿はなかったが、計6万枚となる赤、黒、白のビニール製シートなどで、サポーターとの絆をイメージしたムードを最大限に演出した。スコアレスドローで試合は終了。西川は「このような雰囲気をつくってくれて本当にありがとうございました。たくさんビニール(製シート)を使ってくれて…」と感極まった涙で感謝を口にした。

6月29日から6日間かけ、スタンドを装飾した。クラブ職員をはじめ、後援会、ボランティア、下部組織コーチたちが総出で観客席に足を運び、ビニール製シートをかけた。ベテラン職員が腰を痛めるほどの“重労働”だった。ホームのゴール裏にはJリーグのシャーレに「URAWA」「2020」を付け加え、アウェー側にはサポーターに寄り添う意味を込め「WE STAND BESIDE YOU」と刻み込んだ。

バックスタンドには6月にサポーターが購入したタオルマフラーとフラッグを掲出した。クラブ独自でサポーターとの絆をつなぐ活動「ONE HEART TOGETHER」のロゴ入りなど4種類のマフラー計5629本、エンブレム入りのフラッグ508本も設置。試合後にスタンドから回収し、購入したファンやサポーターに届けるシステムになっている。

浦和は無観客試合を独自に「ONE HEART MATCH」と呼称。「離れていても(サポーターと)必ず心はつながっている」との意味を込めた。14年に処分で無観客試合を経験している西川は「クラブがサポーターのバトンを受け継いで1枚1枚ビニールをはってくれた。前の無観客とは違う雰囲気」と気持ちを高揚させた。次のホームとなる12日鹿島戦は少人数ながらも観客を迎える予定。新型コロナウイルスで様変わりしたスタンドには、浦和のこだわりが凝縮されていた。【藤中栄二】

○…他会場もスタンドに工夫をこらしていた。川崎Fはスタンドの一角に、チームの企画でたびたび登場する“風呂おけ”をサポーターの写真入りで並べた。清水は「コレオグラフィ企画」として、3色の袋をバックスタンド側の座席へかぶせ、文字とイラストを浮かび上がらせた。大分はサポーターの顔写真が印刷された段ボールをゴール裏に2810枚並べた。神戸も観客席にサポーターから募ったフォトパネルを設置した。

◆浦和のコレオグラフィー 通常は人文字のように、サポーターらがスタンドを彩る。通称コレオ。セリエAの聖地サンシーロでのミラノダービーなど世界中のスタジアムで浮かび上がるが、浦和はJ屈指の規模と美しさで圧倒する。米スポーツ専門テレビ局FOXスポーツによる「世界の筋金入りサポーターベスト5」にも名を連ねた面々による“作品”は海外でも知られている。10年ぶりにACLを制した17年、アルヒラル(サウジアラビア)との決勝第2戦ではエンブレムとトロフィー、2度目の制覇を願う2つの星がリボンで結ばれた圧倒的なコレオが後押しした。MF阿部主将は「震えるものがある。勇気を与えてくれる」と言った。浦和のコレオは20年以上の歴史を持つ。