4日に行われた、川崎フロンターレと名古屋グランパスのJ1首位決戦。後半ロスタイム、3-2でリードする川崎フロンターレのU-24日本代表MF田中碧(22)は、相手センターバックからボールを奪った。カウンターで試合を決める、絶好のチャンス。しかし田中は、迷わずコーナーにボールを運んで、時間を稼いだ。

3点リードして迎えた終盤、2失点してなおも相手に押し込まれていた。同点の気配も漂う中で、迎えた後半ロスタイムだった。田中のプレーに、会場は少しどよめいた。川崎Fなら、追加点を狙ってもおかしくない場面だったからだろう。

鬼木監督は一夜明けた5日、田中のコーナーキープについて「ピッチ内の判断」だったと明かした。

シーズン序盤の苦い経験が生きている。開幕6連勝を逃した、3月17日のヴィッセル神戸戦。後半55分(ロスタイム10分)に同点弾を決められて、1-1で引き分けた。

鬼木監督はこの試合の後、「ロスタイムに自分たちのやるべきことがぼやけた。最後の最後まで(得点を狙う姿勢を)見せたいところと、勝たなきゃいけないところのバランス」と指摘し、「しっかりと判断して、点を取って試合を決められたら成功だし、時間を進めて勝ちきるのも成功」と話していた。

名古屋戦では、その反省をふまえて勝利を引き寄せた。コーナーでのキープも、勝利のための立派な選択肢。指揮官は神戸戦の後、「ロスタイムの使い方」について、あらためて選手に確認したという。「(追加点を)取りに行ってもいいシーンも当然あるが、昨日は全体的にかなり疲弊していた。はっきりしたプレーをした、選手の判断を尊重したい」。

川崎Fの選手らが、合言葉のようにSNSにつづる「#勝ちながら修正」を体現した試合だった。【杉山理紗】

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