男子100メートルではジャスティン・ガトリン(37=米国)が9秒91で、優勝候補本命のノア・ライルズ(21=米国)を破って優勝した。大会全体としてもニジェル・アモス(25=ボツワナ)が1分41秒89で優勝した男子800メートルなど、今季世界最高記録が5種目で誕生する盛況だった。五輪&世界陸上種目ではないが、女子1マイルでシファン・ハッサン(26=オランダ)が4分12秒33の世界新記録をマークした。
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男子100メートルは3レーンにガトリン、4レーンに全米学生優勝のディバイン・オドゥドゥル(22=ナイジェリア)、5レーンにライルズと注目の3人が並んだ。
引退したウサイン・ボルト(ジャマイカ)と対戦していた頃のガトリンはスタートでリードを奪っていたが、今回は若干出遅れた。リアクションタイムは0秒195で出場8人中最下位(最も良かった選手は0秒133)。逆にいつもはスタートを苦手とするライルズが、わずかに前に出ていた。
だが20~40メートルあたりでガトリンが体1つ前に出ると、ライルズの終盤の追い上げをかわして0秒01差で逃げ切った。
「信じられないね、20年以上も走ってきた今もダイヤモンドリーグで勝つことができるなんて!(勝因は)経験を生かして技術的にまとめるレースができたこと。ノアは素晴らしい選手で彼とレースをすると毎回興奮するよ」
一方のライルズは、「悲しい結果ではない」と落ち込まなかった。
「スタートがこれまでのレースより良くなっている。もっと技術的にできることはあると思うけど、今回やり始めた方法は多くの自信を与えてくれた」
勝った大ベテランと敗れた新鋭、双方にプラスがあったレースのようだ。
ガトリンの優勝と同じくらい驚かされたのが、男子800メートルの1分41秒台である。この種目での1分42秒未満のタイムは、デビッド・ルディシャ(30=ケニア)が1分40秒91の世界記録で走った12年ロンドン五輪以来、7年ぶりの快挙だったのだ。
アモスにとってもロンドン五輪の1分41秒73(銀メダル)以来、7年ぶりの1分41秒台である。
「ここ数週間すべてが順調で、特に火曜日(9日)に不可能と思えるような練習をすることができて、1分41秒台を出せると思ったよ」
そしてアモスの次のレースは、ダイヤモンドリーグ・ロンドン大会(7月20・21日)だという。
「世界記録は意識しないけど、僕が我慢強ければ実現できるかもしれない」
会場は7年前の五輪と同じロンドン・スタジアムで行われる。
◆今季の男子100メートル
9秒81の今季世界最高を筆頭に9秒8台を3回マークしているクリスチャン・コールマン(23=米国)と、コールマンをダイヤモンドリーグ上海大会で破ったライルズが2強と見られていた。それがモナコ大会で、ガトリンがライルズに競り勝ったことで3強になった。
3人は7月25日からの全米選手権で対決する。
もう1人注目度の高かったオドゥドゥルは、ダイヤモンドリーグ初参戦となったモナコ大会で10秒26の8位に沈んだ。レース序盤で左のレーンにはみ出そうになっていたことから、スタートでバランスを崩したと推測できる。全米学生でサニブラウン・アブデル・ハキーム(20=フロリダ大)らに快勝した力は、今後のダイヤモンドリーグなどで発揮されるはずだ。