東京パラリンピックのアーチェリー代表、長谷川貴大(32=日本テレビ)が21日、許可なく他の選手の弓具に触れる違反行為をしたとして24日開幕の大会出場を辞退した。日本身体障害者アーチェリー連盟よると、全日本連盟の安全規定に抵触するコンプライアンス違反に当たるという。担当者は「殺傷能力のあるライフルなどと同じく他人の機具を無断で触ることは絶対にしちゃいけない行為で、競技者のエチケットの1つ」と重大性を認めた。

日本身体障害者アーチェリー連盟の聞き取り調査の結果、「所有者に無断で競技者の複数台の弓に触れる」行為が7月下旬にあったと認定。長谷川本人が反省して出場辞退を申し出たことで、同連盟が受け入れた。担当者によると、既に日本パラリンピック委員会(JPC)にも事情を伝えたと言い、代わりの選手が出場することはないという。

殺傷能力を持つ機具を扱うアーチェリーでは、使い方を一歩間違えれば大けがにつながりかねない。自分の道具は自分で責任もって管理するというのは、競技に関わる人の間で共通原則。他人の機具に触ることは当人の細かな調節をいじる可能性があるほか、暴発やさらなる大事故を生みかねない。

担当者は「触られた方の選手が知らない場合はけがにもつながりかねないし、仮に競技場外に機具が出てしまった場合に武器にもなりかねない」と危険性を指摘。今回の重大性を受け止めつつ「改めて道具の管理体制や安全講習の徹底を呼びかけていく」と話していた。

長谷川は小学3年で小児がんの一種「ユーイング肉腫」を患い、右太ももから下を切断。その後、パラアーチェリーを始め、早大1年で08年北京パラリンピックに出場。現在はテレビ局でディレクターとして働きながら練習し、今年3月の国内最終選考会で代表の座をつかんでいた。