東京パラリンピックが明日24日に開幕する。世界のトップ選手たちも続々と来日。陸上男子走り幅跳び(切断などT64)では、マルクス・レーム(33=ドイツ)が3連覇を狙う。22日、都内で会見を開いた「義足のロングジャンパー」は、東京五輪を8メートル41で制したテントグル(ギリシャ)の記録超えとともに、自らが持つ8メートル62の世界記録更新を誓った。

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この男には、金メダル以上の「記録」に期待が懸かる。レームはこの日、33歳の誕生日を迎えた。会見ではスタッフらにケーキで祝福されたが、口には一切せず戦闘モード全開。3度目の夢舞台へ「準備はできている。常に高みを目指し、9月1日には(世界記録)8メートル62を超える記録を目指す」と言葉に力を込めた。

14歳の時、水上競技のウエークボード練習中の事故で右脚の膝下を失った。しなりと弾力性を備えるカーボン製の義足で走り幅跳びの記録を伸ばした。14年ドイツ選手権では健常者を破って優勝。12年ロンドン大会は7メートル35、16年リオデジャネイロ大会はリオ五輪の5位に相当する8メートル21の大会新記録で2連覇を達成。今年6月には8メートル62の世界記録を樹立し、東京五輪参加標準記録(8メートル22)を上回った。「メダル争いではなく象徴的な意味で出場したい」として“特例”での五輪出場を熱望したが、一部から「テクニカル(道具)ドーピング」などの声もあり、国際オリンピック委員会に退けられた。スポーツ仲裁裁判所にも訴えたが、棄却された。

レームは五輪とパラリンピックの共存を望み、3連覇以上に記録にこだわる。「義足であっても、世界最高のジャンパーであることを証明したい」。9日後、五輪の記録を上回る世界新の大ジャンプが東京で目撃できるかもしれない。【峯岸佑樹】