24日の東京パラリンピック開会式で、車いすに乗って「片翼の小さな飛行機」として物語の主人公を演じた公募キャストの和合由依さん(13)が一躍、注目された。国際パラリンピック委員会(IPC)広報責任者のクレイグ・スペンス氏は25日、都内のメインプレスセンターでの会見で、存在感満点の演技で人々を魅了した和合さんを「新スター」と絶賛した。

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IPCのスペンス氏は開会式から一夜明けた会見で、真っ先に和合さんの名前を挙げた。「昨夜、日本に由依ちゃんというスターが生まれた。多くの日本人の心を捉えたと思う。私も涙、涙で、恥ずかしいくらい泣きました。本当にすばらしい開会式でした」。

開会式のコンセプトは「WE HAVE WINGS(我々には翼がある)」。「翼」をテーマにした物語で、和合さんは主人公の「片翼の小さな飛行機」を演じた。「勇気を出して翼を広げれば、どこにでも行ける」。ギタリスト布袋寅泰の演奏にも負けない存在感あふれる演技で、物語に込められたメッセージを伝えきった。大会関係者によると、演技を終えた和合さんは感極まって号泣し、父親が抱き締めたという。

演技は未経験。「今まで出会えた人たちに、今の自分を見てほしい」と応募した。5000人以上が参加したオーディションで、楽器演奏や絵画、物まねを披露した。

先天性の羊膜索症候群、関節拘縮症による上肢下肢の機能障がいがある。体調管理のため、チョコレートやドライフルーツを補給しながら練習に臨んだ。「練習は全部楽しかった」。通学先では生徒会役員を務める。「よくしゃべる、よく笑う、友達が多い、コミュニケーション能力がある、とよく言われます」。ゴタゴタ続きの東京大会に、好奇心旺盛な無名の13歳が明るい話題を提供した。【近藤由美子】