東京大会から新採用されたバドミントンで日本女子がメダルを量産した。シングルスで車いすWH1の里見紗李奈(23=NTT都市開発)が、決勝でライバルのスジラット(タイ)に14-21、21-19、21-13で逆転勝ち。日本人金メダル第1号になった。上肢障害SU5の鈴木亜弥子(34=七十七銀行)は銀、杉野明子(30=ヤフー)は銅。車いすWH2の山崎悠麻(33=NTT都市開発)も銅メダルを手にした。ダブルスでも下肢障害・上肢障害の伊藤則子(45=中日新聞)鈴木亜弥子組が銅メダルを獲得した。

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最大のライバルとの激闘を制して初代女王の座を手にすると、里見は歓喜の叫びを上げた後、車いすの上でとめどなく涙を流した。新競技のバドミントンで日本勢として金メダル第1号。「信じられないぐらいうれしい。夢みたい」と喜びに浸った。

強敵スジラットとの頂上決戦。第1ゲームを落とし、第2ゲームは中盤まで優位に運びながらも9連続ポイントを奪われてひっくり返されたが、気持ちを切らさず再逆転。第3ゲーム終盤に突き放した。

高校3年時の交通事故で車いす生活になった。リハビリの一環として父にパラバドミントンを勧められた当初は「車いすの自分を受け入れることができていなかった。あまり人と会いたくないという気持ちもあった」と乗り気ではなかったが、今回の東京大会にも出場する村山浩が創設したクラブへ父親に強引に連れて行かれ、競技の魅力を知った。「1人だったら絶対に入っていなかった世界。父に感謝している」。最高の結果での恩返しに「親孝行できた」と笑顔を見せた。

シングルス、ダブルスともに世界ランキング1位の実力者。5日には山崎悠麻とのペアで女子ダブルス決勝に臨む。「シングルスは1人で心細いけれど、ダブルスでは悠麻さんが隣にいてくれる。2人で初代女王になりたい」。2冠目も、目の前にある。【奥岡幹浩】

◆里見紗李奈(さとみ・さりな)1998年(平10)4月9日生まれ、千葉県出身。中学時代はバドミントン部に所属。高校3年の16年に交通事故に遭い、脊髄を損傷。両下肢に障がいが残り、腰から下を動かせなくなった。リハビリの一環としてパラ競技のバドミントンを始め、約2年半後の19年世界選手権で初優勝。パラリンピック東京大会開幕時点でシングルス、ダブルスとも世界ランキング1位に君臨する。