2020-2021シーズンも終盤に入り、欧州チャンピオンズリーグ(CL)は決勝を残すのみとなりました。これほどスタジアムに足を運んでいないシーズンは過去になく、それは皆さんも同様だとは思います。その影響かどうかは分かりませんが、スペインリーグはまれに見る混戦となりました。最終節での王者決定の状況で、終盤まで珍しく4クラブ拮抗(きっこう)の状況が続きました。セビリアが優勝すれば75年ぶりということもあり、期待したファンも多かったと思いますが、結果的に優勝争いはマドリードの2チームに絞られ、アトレティコ・マドリードが勝てば文句なしの自力優勝となり、一方でレアル・マドリードは勝利が絶対で、さらにアトレティコが引き分け以下の場合にのみ逆転優勝となります。結果的にラ・リーガにおいては残留争いも最終節までハラハラする状況です。これは13−14シーズンから行われたリーガ改革の1つの結果として表れており、より魅力的な競争力のあるリーグを作り上げるというところに結びつくかと思います。

もつれている一方で、リーグ戦に体力を奪われたのか、CLではバルサ、レアルのスペイン2強が振るわず、レアルはベスト4まで進出したもののチェルシーに屈する形で敗退。決勝はイングランドの2チームということで、一時期のスペインチームの勢いに陰りが見えた形となりました。同時にUEFAと対立する形でスーパーリーグ構想が発表されるなど混乱を招きつつあったヨーロッパフットボール界ですが、コロナ禍のUEFAの決算が発表されておりましたので取り上げてみたいと思います。

【トピックス】

<1>売り上げ:30億3800万ユーロ(コロナ前シーズンと比較して約8億2000万ユーロダウン)

<2>純損失:コロナ前シーズンが約4630万ユーロに対して約7390万ユーロの損失を計上

<3>商業関連の権利収入が4億1700万ユーロであったのに対して、メディア関連の権利収入の売り上げが25億9000万ユーロであった

ご存知かとは思いますが、売り上げダウンの主な要因として、単純な試合数の減少、そしてコロナによる無観客試合、さらに放映権関係各社・スポンサーに対するリベートの支払いなどが主な原因であると発表しております。

メディア関連の権利収入:約25・9億ユーロ(総売り上げ高の85%強)

スポンサーシップ・ライセンスなどの商業権利収入:約4億1780万ユーロ

コロナ前シーズンと比較してメディア権利関連の収入が大きいのは変わりありませんが、特徴的なのは収入の大部分が放映権収入になるということになります。また、この売り上げの多くはCLやヨーロッパリーグ(EL)といったトーナメントイベントにおける売り上げであるとしています。国別のトーナメント関連との売り上げ比率でいくと9:1にもなるとレポートされており、極めてCL・ELといったイベントのメディア収入が強いか示していることにもなります。また、会計上大切になるキャッシュフローを見てみると、以下のようになります。

コロナ前の18−19シーズン:マイナス約1億7200万ユーロ

19−20シーズン:約3億2000万ユーロ

このコロナ禍においてプラスで計上されており、当然現金を保持する量を増やすことでリスクに対応していく意味では理解できます。しかしクラブ運営サイドにしてみれば、それすらもできない状況のクラブが多い中、どうしてもUEFAには財務面での余裕があるように見えてしまいます。

頓挫しつつあるスーパーリーグ構想にはなっていますが、こういったところからも本来流されるべきお金がUEFAで止められているような感覚が強いと感じることができると思います。次回はリーグ戦の決着を横目で見つつ、移籍市場の展望などを見てみたいと思います。【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)