日大アメリカンフットボール部が廃部になるというニュースが流れた。複数の部員が薬物問題を起こし、逮捕者も出た。長く大学スポーツに関わる者として、あまりにも悲しい事件だ。4年間、スポーツと学業に打ち込み、競技力と人間力を向上させ、社会人として日本や世界に貢献してほしいアスリートたちが、クスリに手を染めてしまった。私には考えられないし、想像もつかない厳しい現実だ。

深く考えてみた。当然、まずは薬物に走った学生が最も悪いのは言うまでもない。それが大前提で、改善策を自分なりにまとめてみた。もう1度言っておくが、大きな壁にぶち当たったとしても、興味半分でも、どんな理由があっても、薬物や甘い誘惑に逃げてはいけない。

サッカーもそうだが、野球やラグビー、バスケットボール、バレーボールなど大学スポーツに身を置く多くのアスリートは、小学生の頃から、スポーツに入門し、その種目に触れ、約10年の間、そのスポーツが生活の主体となり、生きてきたはず。大学でも続けるような選手なら、それぞれの地元や所属チームではエースや主力として、仲間から頼られ、家族や先生、指導者など周囲から期待された者が多い。

各大学は現在、少子化などで年々志願者が減る傾向にあり、確実に入学してくれるスポーツ推薦などの枠を広げる動きがある。多くの大学が、高校時代のスポーツ成績などを考慮し、特待生の区分に応じて、授業料免除などさまざまな条件を設けて募集要項を作成し、目を向かせている。実績や大学でもその種目で勝負したい生徒は、推薦枠で新たな挑戦を始める。もちろん一般入試でクラブ活動を続ける学生も多い。

しかし大学に入ると、ほんの一握りの選手だけが学校の名を背負って公式戦に出場する。多くの期待と、希望を持って大学に進学しても、日本全国から集まる優秀なアスリートとの競争の壁は高くて厚い。チーム内競争に負けた選手は、それまでエリート・コースを歩んできたプライドがズタズタにされる。挫折し、スポーツ以外に目を向けることが増えてしまう。

実際に国士舘大サッカー部には180人の部員が在籍中だが、関東1部のリーグ戦に出場できるのは20人程度だ。4年間、大学のユニホームに1度も袖を通せずに卒業する学生も多かった。そのため、私はインディペンデンス・リーグ(通称Iリーグ)新設を企画した。当時、日本サッカー協会(JFA)会長だった川淵三郎氏の強烈な後押しもあって、03年に設立できた。同好会や2軍以下の選手も大学名を背負い、ユニホームを着て公式戦に出られるようになった。国士舘大は現在、大学を代表して4チームが公式戦に出場できる。

今の日本代表の多くが、Iリーグ出身で、少し前まで日本代表だったDF長友佑都も明大時代にIリーグで公式戦デビューしている。多くのアスリートに公式戦出場の機会を増やすために新設したIリーグは、代表への登竜門へと、発展した。

この制度が、サッカーだけでなく他のスポーツにも広がってほしいと、切に願っている。公式戦に出られず、モチベーションを下げ、爆発する若いエネルギーを抑えられない学生も多いはず。しかし目の前に公式戦という目標があれば、それに集中できるし、脇見もしなくなる可能性が高い。行き場をなくし、挫折するアスリートの数をいかに減らせるか。これは、我々指導者や大学、関連団体、自治体、政府が考えないといけない大きな課題だ。

私は現在、大学スポーツ協会(ユニバス、UNIVAS)の理事を務めている。今後、各種目に公式戦の出場機会を増やせるような提案をしていきたい。多くのアスリートが大学を代表して公式戦に出られるような機会を増やしてあげたい。究極かもしれないが、これは他の誘惑に走るアスリートを減らす効果があると、思っている。

しつこく言うが、今回の日大アメフト部の薬物問題は、薬物に走った学生が最も悪い。しかし我々、スポーツに関わる先輩や指導者、行政団体は、彼らを一方的に批判するだけではなく、アスリートがスポーツに打ち込める環境を整える努力をしないといけない。サッカーのみならず、野球などは部員が300人、400人所属する大学も少なくない。400人の部員の中で、4年間、公式戦に出られるのは数十人だけだ。残る300人以上は、練習や練習試合だけで大学を卒業していく。

このストレスが薬物に走ったきっかけとなったとするなら、やはり改善が必要だ。精神も肉体も健康で、健全な青年を育てるのはスポーツに関わる者の義務である。現実を直視して、改善策を考えたい。大学が元気になれば、日本全体が元気になると信じている。

(学校法人国士舘理事長)(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー人生70年 国士舘大理事長 大澤英雄」)