前戦サウジアラビアに1点差勝ちは分かるが、ベトナム相手にこの内容は物足りない。J2水戸ホーリーホックにいたFWグエン・コン・フォンにあんなにやられるとは…。横綱サッカーではなかったな。もっと「差」を見せつけてほしかった。

格下のベトナムとの対戦は“プレゼント”だったはずだ。そこにベストメンバーで臨んだ。交代カードの切り方も、代わり映えしない。結局、台所事情が苦しいんだ。ベトナムは高さがないからゴール前の守備では優位になるはずが、スピードで来られると吉田も冨安も大わらわ。ボランチ柴崎がパス一辺倒で、相手ボールを奪いに行くタイプではないから、DF陣の負担が増えた。

この疲れが準決勝に影響しないか、懸念はある。ウズベキスタン戦で「Bチーム」を出し、「層が厚い」なんて、ちやほやされたのは何だったの? 

FIFAランクが示す以上に準決勝の相手イランは総合的に格上だ。今大会5試合無失点。攻めては取るべき選手が得点し、途中出場の選手も結果を出す。190センチ級の選手がいてフィジカルも強い上、サイドからの崩しもある。準々決勝では中国の守備のミスがあり、それを見逃さないしたたかさが光った。日本は失点にはつながらないながら、守備で不用意な場面もあるので気をつけたい。

今大会対戦してきたオマーンやウズベキスタン、サウジアラビアは、近年ワールドカップ(W杯)予選などで対戦してきた相手だった。一方、イランとの対戦は15年の親善試合以来、真剣勝負では05年W杯予選以来と久しぶりだ。日本が本当に成長しているのか、試される。プライドはあるだろうが、チャレンジャーの気持ちで臨んでほしい。目新しいことではなく、「守備力と経験」を武器に戦うしかない。(日刊スポーツ評論家)