日本サッカー協会は、単独立候補で、現会長・田嶋幸三氏(62)の続投が決まった。

以前は役員選考委員会で次期会長を選別し、密室選挙と批判されたこともある。FIFAの勧告で4年前から会長選が始まった。当時は47都道府県や関連団体から後押しされた田嶋副会長が、Jクラブをバックにつけた原博実専務理事を6票差で下した。その2年後は田嶋氏単独立候補。事実上4年任期(2年後は信任投票のみ)となった今回も対抗馬なし。

日本サッカー界には「選挙は葛藤のもと、サッカー界が分裂する」との声が根強い。昨年日本協会はFIFAに「評議員による投票は国内法に触れる可能性がある」と、理事会承認の日本独自選挙法への移行を訴えたが、受け入れられなかった。継続性が欠けるなどのリスクはあるが、選挙によりトップが決まるのは、どの制度よりもクリーンなのは間違いない。

一方でJリーグはどうか。役員候補者選考委員会で厳正な手順を踏んで、村井満チェアマン(60)が、理事会に推薦され、承認された。公平性を高め、より豊富な人材を候補者にするため、外部アドバイザーを加えた。J顧問弁護士でもある野宮拓委員長は「他の候補者とは相当な開きがあった」というように、村井氏の4期目続投に疑問を持つ人は少ない。入場者数は過去最高を記録し、DAZNマネーの投入で資金面でも潤っている。

特に今回は、同委員会に現職幹部や職員はメンバーから除外した。より公平性を高めるためだ。個人情報にかかわることなどで候補者50人のリストは明かされず、著作権を理由に推薦までの詳しい資料も配布されなかった。選定過程もオープンではなかった。しかしわずかだが、前回より前進したのは確かだ。

ただ1歩間違えれば、密室選挙につながる可能性があることは否定できない。今のシステムなら、委員会の説明を100%信用するしかない。仮に委員会内部で問題定義があったとしても、内々での解決法、逃げ道はいくらでもある。委員長次第で推薦人物が偏ることもある。今回が大丈夫でも、次回大丈夫とは限らない。

日本サッカー協会は9月に設立100周年を迎える。日本協会の選挙制度変更はわずか4年前。Jリーグは今回が初めて。今後、選挙改革を試み、5年後10年後には新たな改革案が生まれることもあるだろう。発展に試行錯誤はつきもの。その中で、日本サッカーが、Jリーグが着実に進化し、世界との差を縮めてくれればいい。【盧載鎭】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

◆盧載鎭(ノ・ゼジン)1968年9月8日、ソウル生まれ。88年来日し96年入社。20年以上サッカー担当。2年間相撲担当。マスクのストックがどんどん減り、焦りが生じ始めた今日この頃。2児のパパ。