すべての人々にサッカーを楽しんでもらおうと、これまでもさまざまな企画を行ってきたJ2東京ヴェルディが、2023年も心に残る観戦体験をファンに提供する。

東京Vは今月5日に本拠地・味の素スタジアムで行われたヴァンフォーレ甲府戦で、障がいのある方々がスタジアム内でくつろぎながら試合を楽しむことができる「Green Heart Room」を再び開催した。

東京Vはこれまでも「Green Heart Room」にさまざまな障がいがあるファンを招待してきたが、今回は23年の1回目。「センサリールーム(聴覚や視覚など感覚過敏の症状がある人やその家族が安心して過ごすことができる部屋)のその先へ」がテーマとなった。

クラブの願いは障がいだけでなく、重病を患っているなど、どのような状況にあってもすべてのファンが試合を観戦できるようにすること。今回は初めて「東京こどもホスピスプロジェクト(https://tokyohospice.jp/)」と連携し、同プロジェクトを通じて本間柊平さん(19)と岩井杏さん(10)をスタジアムに招待した。

2人は試合前にピッチまで降りてサッカー体験をしたり、サプライズで登場した東京V・FW河村慶人と記念撮影をして過ごした。その後、「Green Heart Room」で試合を楽しんだ。試合は0-0のスコアレスドローに終わったが、2人は十分に楽しんだ様子で帰路に就いた。

慢性閉塞(へいそく)性肺疾患と白血病を患う本間さんは試合前「車いすだとハードルが高くて、普段はスタジアムに行く手前で諦めちゃったりすることが多かった」と話していたが、東京Vのゲームを観戦し「得点が取れなくて悔しかったけど、生で試合を観られて貴重だった。いい体験になった」と充実した時間を過ごした様子だった。

またウルリッヒ型筋ジストロフィーを患っている岩井さんは「楽しかった。河村選手がハイタッチをしてくれた」と喜び、初めて触ったサッカーボールについて「硬かった」と初々しい笑顔で振り返った。

東京こどもホスピスプロジェクトは、生命を脅かす病気を持つ子どもとその家族の支援に関心のある市民に対して、専門病院や教育機関をはじめとするさまざまな機関と連携し、子どもとその家族の生活を向上させていくことを理念とするNPO法人。佐藤良絵代表も長男を骨肉腫で亡くし、長男の闘病当時、東京Vのスクールに通っていた次男の送り迎えが困難となり、サッカーを諦めざるを得なかったというつらい経験を持つ。そういったこともあり、今回の連携が実現したという。

現在、スタジアム内にセンサリールームを設置するJクラブは増えている。その中で東京Vは障がいだけでなく、さまざまな病気を患う、あらゆる状況のファンが安心して観戦できる環境の提供を目指しており、今年も活動の規模、内容をどんどんスケールアップしていく意向だ。今回の「Green Heart Room」はそれに向けた、大きな1歩となった。【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)